2016 Fiscal Year Annual Research Report
Neural Mechanisms of Anger Regulation: Studies with Neural Network and Decoding Analysis
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15J09321
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
源 健宏 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 怒り / 許し / 感情 / 前部帯状回 / エピソード記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,怒りの制御を支える神経メカニズムを解明することを目的としている。本年度は,昨年度に開発した怒り誘導課題を用いてデータを追加収集することで,その妥当性の検証に取り組んだ。具体的には,社会的拒絶課題と不平等な金銭分配課題を組み合わせることで怒りを誘導し,同時に表情筋の一種である皺眉筋の電位の計測をおこなった。さらに,課題後に復讐課題を課すことで,怒りの強さを測定した。その結果,いずれの指標においても,十分な怒りの効果が認められた。 また,誘導された怒りが,記憶の形成に与える影響を調べることで,怒りの波及的効果についても検討を進めた。この研究では,怒り誘導に先立ち,4名の実験協力者の顔写真と性格特性単語の連想記憶課題を与えた。怒り誘導課題では,4名の内の1名が加害者の役割を担当し,実験参加者に対してネガティブなコメントを与えた後に不平等な分配をおこなった。その後,記憶テストを実施したところ,加害者と結びつけられたネガティブな性格特性単語の記憶成績が上昇する一方で,ポジティブ単語の記憶成績は低下した。この結果は,怒りが,記憶の変化を誘導することを示している。 怒りを含む情動制御の神経メカニズムを解明すべくfMRI実験にも着手し,前部帯状回や前頭前野の活動を中心としたデータの解析を進めている。加えて,情動制御に間接的に関与することが知られている認知制御の神経メカニズムについても思慮を深め,個人差の観点から導き出した仮説を論文としてまとめた(Current Directions in Psychological Science)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
怒りの制御を評価するためには,怒り状態を客観的に計測する必要がある。そこで,怒りの指標として用いられる表情筋の電位計測と経済ゲームで使用される金銭調整課題を用いることで,怒りの定量化をおこない,十分な怒りが誘導できていることを確認した。また,怒りを含む感情の制御には,情動制御の神経プロセスに加え,認知制御の神経プロセスも間接的に作用することが知られている。この点に着目し,それぞれの神経プロセスについて並列的に検討を進めており,必要なデータが集まってきている。以上の理由から,本研究課題は,概ね順調に進展していると結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
情動制御と認知制御の神経メカニズムの詳しい仕組みを明らかにするために,機能的結合分析を中心とした多変量解析を進め,特に重要な機能を担う脳領域間の結合を明らかにする。さらに,脳刺激法を用いることで,これらの領域が,情動制御に対して因果的役割を担うことを突き止めたい。また,怒りの制御を促すような心理学的・神経科学的介入法についても探索したい。
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Research Products
(4 results)