2015 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体に金属錯体を担持した革新的アンモニア合成システムの開拓
Project/Area Number |
15J09325
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
片山 精 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | イオン液体 / 金属錯体 / 窒素固定 / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、表面増強赤外分光による触媒反応メカニズムの解明、および電気化学的アンモニア合成における実験反応条件を精査、高効率化の検討を行ってきた。 金属錯体には、チタノセンジクロリドを使用し、イオン液体には1-butyl-1-methylpyrrolidinium tris(pentafluoroethyl)trifluorophosphateを使用した。実際に測定を行ったところ、測定には成功したものの、得られたスペクトルは複雑であり、解析が困難な状況であった。 イオン液体中での電気化学的特性を検討するために、Linear sweep voltammetryの測定を行った。測定はチタノセンジクロリドが還元される電位で行った。窒素雰囲気下で得られた電流値の値は、アルゴン雰囲気下で得られた電流値よりも大きかった。このことは、電気化学的に還元されたチタノセンジクロリドと窒素ガスが反応していることを示している。 次に、-1.5 V (vs.Ag/AgCl)で定電位電解を行い、実際にどの程度アンモニア合成が行われているのか検討することとした。定電位電解を行ったところ、アンモニアの収率が金属錯体あたり27%、電流効率は最大で1.4 %であるということがわかった。 得られたアンモニアが窒素ガスに由来するものか調べるために、15N2ガスを使用した、同位体実験を行った。インドフェノールアニオンが14N窒素ガスを使用した場合、m/z =198に観測され、15N窒素ガスを使用した場合、m/z = 199に観測された。このことは、窒素ガスに由来したアンモニアが生成していることを示している。反応装置を改善したことによって、ガスの使用量が大幅に低減したことから、設計したフローセルによる定電位電解実験は、有意義なものだと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、幾つかの金属錯体とイオン液体の組み合わせを測定し、メカニズムを検討していく予定であった。しかし、どのような挙動を示しているか解釈しきれていない。引き続き解析を行う予定である。 電気化学的アンモニア合成における実験反応条件を精査、高効率化の検討では、設計したフローセルを用い、その反応性の検討を行ってきた。定電位電解を行ったところ、電流効率は、反応の初期段階で数%であり、最終的0%となることが明らかとなった。このことから、金属錯体を変更する必要があると考えられる。得られたアンモニアが窒素ガスに由来しているかどうかを調べるために、同位体窒素ガスによる確認実験を行った。得られた結果は、アンモニアは窒素ガスに由来しているということを示していた。このことから、常温常圧条件という非常に温和な条件での電気化学的アンモニア合成が行えているといえる。しかし、予定していた細かな実験条件の調整は行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
表面増強赤外分光測定による触媒反応のメカニズムの解明は、本研究において必要不可欠なことであると位置づけている。細かな装置の設定条件などを変更しつつ、再度測定を行い、反応のメカニズムなどに言及したいと考えている。今後は、モリブデン-窒素錯体を使用して測定を行う予定である。モリブデン-窒素錯体はend-onで窒素分子と配位結合を形成する。その配位した窒素分子の結合に由来する振動スペクトルは、非常に強く観測されることから、解析が容易となる。当該年度で実際に測定を行い、その結果を考察していく予定である。 チタノセンジクロリドを使用した電気化学的アンモニア合成について、当該年度で得られた電流効率は、定電位電解の初期段階で1.4%であったが、最終的に0.2%となってしまった。この失活のメカニズムを検討するために、金属の価数が異なるチタノセンを使用したアンモニア合成を検討する。 現在は、チタノセンジクロリド(IV)を使用しているが、化学的に還元処理を行ったチタノセン(III)やチタノセン(II)も使用し、反応性を検討することで、どのような違いが生じるか検討したい。 電流効率を根本的に改善するために、チタノセンジクロリド以外の金属錯体として、モリブデン窒素錯体を使用する予定である。モリブデン窒素錯体は、プロトンと反応することで、アンモニアを生成することが知られている。有機溶媒中での研究例も数多くなされているため、イオン液体中での反応性が比較的容易になるのではないかと考えた。モリブデン-窒素錯体を使用して、定電位電解を行い、その電流効率を評価していきたい。
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Research Products
(10 results)