2015 Fiscal Year Annual Research Report
第二言語学習に伴う脳内ネットワークの変化:脳機能計測と拡散強調画像法による検討
Project/Area Number |
15J09382
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 香弥子 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 拡散強調画像法 / 第二言語習得 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第二言語習得を実現する神経基盤を、非侵襲的脳計測法と行動的手法を組み合わせることで明らかにすることを目的とする。言語処理に関わる代表的な経路として背側経路と腹側経路が知られているが、背側経路はより複雑な言語処理に関わることから、腹側経路よりも成長に時間がかかると考えられるものの、十代まで成長が続くのか、神経線維束の性質の変化と言語習得には関係があるのか、といったことは明らかになっていなかった。今年度は中学二年生と高校二年生を対象として解析を行った。第二言語(英語)の習得度に基づいて、中学生二年生14名(Junior群)、Junior群と同じ第二言語習得度の高校二年生18名(Senior (Low)群)、これら二つの群よりも有意に習得度の高い高校二年生15名(Senior (High)群)に分類した。拡散強調画像法により背側経路(弓状束)と腹側経路(下前頭後頭束)を可視化し、線維束の太さ(断面積)と、拡散異方性の程度を表し髄鞘化の程度を反映していると考えられているfractional anisotropyにより、これらの線維束を評価した。左弓状束の太さに関して、Senior (High)群・Senior (Low)群ともにJunior群よりも大きかったことから、年齢の影響が大きいことが示唆される。一方で、左弓状束のfractional anisotropyに関しては、Senior (High)群がSenior (Low)群・Junior群よりも大きかったことから、言語習得の影響が大きいことが示唆される。このように弓状束には対象とした年齢において可塑性が残っている一方で、下前頭後頭束に関しては、左右両半球においていずれの指標についても群間の差が見られなかったことから、中学二年生の段階である程度成長が完了していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、中学生二年生・高校生二年生を実験参加者とした拡散強調画像の解析に取り組み、言語処理に関わる背側経路と腹側経路の発達に関して新規の研究成果を得た。研究成果は国内学会と国際学会において発表を行い、現在国際誌への投稿に向けて成果をまとめる段階に至っている。研究計画から多少の変更を行ったものの、十分な研究成果が得られており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、機能的磁気共鳴画像法を用いた新たな実験の計画を行っている。今後は適切な実験参加者の条件を設定し、集中的な第二言語の学習の前後で、脳活動およびそれぞれの部位の機能的結合がどのように変化するかを検討する。今年度行った拡散強調画像法の解析により得られた成果と合わせて、第二言語習得を実現する神経基盤に関して、構造と機能の両観点からのアプローチを進める。
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Research Products
(3 results)