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2016 Fiscal Year Annual Research Report

オルガネラ成立過程の初期段階を緑藻細胞内共生リケッチアを用いて解明する

Research Project

Project/Area Number 15J09494
Research InstitutionTokyo Institute of Technology

Principal Investigator

川舩 かおる  東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(PD)

Project Period (FY) 2015-04-24 – 2018-03-31
Keywordsリケッチア / 緑藻 / 細胞内共生 / ゲノム配列
Outline of Annual Research Achievements

申請者は、緑藻細胞内に共生するリケッチア(通称 “MIDORIKO”)のゲノム情報を用いて、細胞内共生体遺伝子水平伝播の段階的発展によってバクテリア共生体がホストによる制御を受ける過程を解明し、ミトコンドリアのオルガネラ化進化過程を推測することを目的として研究を行っている。本年度はMIDORIKOゲノム配列を用いて「共生体としてのMIDORIKOの性質の解析」を実施した。
単細胞緑藻Carteria cerasiformisをホストとするMIDORIKOについて、国立遺伝学研究所の協力によってPacBioを用いたロングリードシーケンス(リード長 1-10 kbp)を実施し、前年度決定したゲノムDNA配列の確認と修正を行った。決定したMIDORIKO完全長ゲノム配列(環状DNA配列 1.5 Mbp、プラスミド様環状DNA配列3本 121/75/61 kbp)に対し、複数のバイオデータベースに対する検索結果を組み合わせたアノテーションを行い、1583 CDSs、3 rRNA、35 tRNA、1 tmRNA、72偽遺伝子を予測した。
代謝経路予測の結果、解糖系、ペントースリン酸経路、アミノ酸・ビタミン合成経路は他のリケッチア目バクテリアと同様に不完全であり、ホスト依存的な栄養性が推測された。一方、他のリケッチア目バクテリアの遺伝子と類似しない240遺伝子が同定され、その中には細胞内ストレス耐性に関与すると考えられているスペルミジンの、合成と輸送に関連する遺伝子が含まれた。また、IV型分泌装置の構成要素VirB3、B4、B6をコードした領域は、病原性リケッチアを含むリケッチア科バクテリアでは保存的であるが、MIDORIKOゲノムでは欠損していた。
以上から、リケッチアの中でMIDORIKOのみが持つ緑藻ホストとの共生能力に、細胞内ストレス耐性への適応と弱毒化が関係することが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本年度は、前年度完了しなかった「MIDORIKOゲノム配列の解読」に加えて「共生体としてのMIDORIKOの性質の解析」を行ったため、その後実施予定であった「核ゲノム配列の解読」が遅れている。
前年度、MIDORIKOゲノム配列に対し、微生物アノテーションパイプラインサービスMigap(国立遺伝学研究所)により機械的に遺伝子同定を行ったが、偽遺伝子や、既知の配列と類似性が低い遺伝子、また極めて保存性が高い遺伝子に対して誤判定が多いことが判明した。本年度は、新たにCDS探索ソフトウェアGlimmer、タンパク質ドメイン統合検索データベースInterPro、タンパク質機能的類似性情報データベースKEGG Orthologyを用いて、全アノテーション結果の検証と修正を行った。さらに、tmRNAや、挿入配列、転移性イントロンの同定、偽遺伝子の同定を行った。このため作業が増大したが、正確なアノテーションを行うことができた。
得られたMIDORIKOゲノム完全配列とアノテーション結果から、「核ゲノム配列の解読」に先行して「共生体としてのMIDORIKOの性質の解析」を実施した。MIDORIKOの持つ遺伝子と他のリケッチア目バクテリアを比較することで、MIDORIKO独自の遺伝子の獲得と欠損を明らかにし、それらがMIDORIKO独自の緑藻ホストとの共生能力に関係すると予測した。これらの結果は本研究のみならず、リケッチア目バクテリアの病原性やホスト特異性の進化の解明に寄与するものである。
「核ゲノム配列の解読」は、以上の作業の追加、さらに、PacBioを用いたロングリードシーケンスの結果核ゲノムのリードが予想よりも少なかったことから遅れているが、来年度は再度ロングリードシーケンスを実施し、作業を完了する予定である。

Strategy for Future Research Activity

今後は「ホスト核ゲノム配列の解読」を行い、MIDORIKOからホスト核に転移した遺伝子配列を探索する。ホスト緑藻の核ゲノムDNAを高速シーケンサーillumina MiSeqとロングリードシーケンサPacBioにより解読、配列を決定する。核ゲノム上のMIDORIKO遺伝子配列を探索し、発見されたMIDORIKO遺伝子配列は真核生物性の構造の有無を調査する。
また、ホストのトランスクリプトームを解読し、転移遺伝子配列の転写を調査する。ホスト緑藻 Carteria cerasiformis NIES-425株と、同種でMIDORIKO非共生のNIES-424株から真核生物性mRNAを抽出し、MiSeqペアエンドシーケンスとアセンブルにより解読する。得られたホスト核由来のトランスクリプトームデータを用いて、ホスト核ゲノムにコードされたMIDORIKO遺伝子配列と相同な配列がホストから転写されているかどうかを配列類似度検索により調査する。転写産物が発見された場合は、末端シグナル配列の付与など、翻訳産物の共生体への再輸送に関わるアミノ酸配列の有無を調査する。

  • Research Products

    (1 results)

All 2016

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 緑藻共生リケッチアのゲノムから植物細胞内への共生メカニズムを探る2016

    • Author(s)
      川舩かおる、桑原宏和、坂本智昭、倉田哲也、廣岡俊亮、宮城島進也、野崎久義、本郷裕一
    • Organizer
      日本植物学会第80回大会(シンポジウム「次世代シークエンス×藻類学=次世代藻類学」)
    • Place of Presentation
      沖縄コンベンションセンター、沖縄
    • Year and Date
      2016-09-17 – 2016-09-17

URL: 

Published: 2018-01-16  

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