2015 Fiscal Year Annual Research Report
電波観測を用いたリアルタイム宇宙天気予報システムの構築
Project/Area Number |
15J09524
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
岩井 一正 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波計測研究所・宇宙環境インフォマティクス研究室, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 太陽 / コロナ / 宇宙天気 / 電波天文 / デジタル分光 / FPGA |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽の大気コロナでは、フレアに代表される爆発現象や、コロナ質量放出(以下CME)と呼ばれるプラズマ雲の放出現象が発生する。その過程では、強い電波放射(太陽電波バースト)が発生する。電波を発生される高エネルギー粒子やCMEは放出方向によっては地球周辺に到来し、宙空環境で様々な宇宙天気災害を引き起こす可能性がある。粒子の伝搬速度よりも電波の伝搬速度は速いため、電波バーストの検出は宇宙天気災害の有効な予報手段となる。本研究は、高分解太陽電波望遠鏡による太陽電波バーストの連続観測を通じて、太陽コロナでの粒子加速現象の理解を深め、そして電波バーストの自動観測を通じて、電波を発生させる現象の地球への到来予報を行うことという2つの目的を持ち、本年度は以下の活動を行った。 1. 太陽電波バーストの広帯域分光撮像観測の実施 山川望遠鏡は受け入れ研究機関であるNICTが新たに開発した太陽電波望遠鏡であり、8msの時間分解能で太陽電波スペクトルの連続観測が可能である。本年度は、この望遠鏡の完成に向けた作業を行った。その結果、太陽電波バーストの観測が十分に可能な感度、及びスペクトルの分解能を引き出すことに成功した。更に作業と並行して試験観測を継続して行った。その結果、複数の太陽電波バーストの受信に成功した。 2. 電波を用いた太陽大気の基礎研究 フレア・CME発生の理解には彩層大気の理解が重要であることが近年注目されている。彩層はマイクロ波・ミリ波と呼ばれる高い周波数の電波で観測できる。そこでこの帯域で太陽を観測できる野辺山電波ヘリオグラフ及び野辺山45m望遠鏡を用いた太陽観測を行った。その結果、フレアを発生させる太陽黒点の中心領域の大気構造が従来考えられていた大気モデルよりも更に上空まで黒点磁場に支配されていることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は受け入れ研究機関である情報通信研究機構における新太陽電波望遠鏡を用いた太陽電波の観測的研究、および観測データを用いた宇宙天気予報システムの開発が中心の研究課題である。本年度はその計画のうち、主に望遠鏡の立ち上げと観測を中心に行った。 特に、アンテナの指向精度が想定より悪いことと、システム自身が発する低周波数の雑音電波が、想定より弱い観測精度の原因であることを突き止め、それらの問題点の解決のための作業を行った。その結果、太陽観測に耐えうる十分な性能を引き出すことに成功した。作業と並行して、試験観測を行った。その結果、複数の太陽電波バーストの観測に成功した。しかもその中には本研究で重要な観測対象の一つであるII型バーストが複数含まれている。この成果は、今後の研究計画を遂行する上で極めて重要であり、十分な結果と言える。 加えて、山川望遠鏡で観測するコロナからの電波バースト放射とは科学的に相補的な関係にある、彩層大気についての基礎研究も進めた。この研究では、野辺山45m電波望遠鏡、及び電波ヘリオグラフを用いて太陽彩層からの電波放射を観測し、フレア発生の基礎情報となる彩層の大気構造に関する新たな知見を得ることに成功し、研究代表者を筆頭著者とした査読論文1本が受理され、1本が投稿中という成果を出すことができた。 研究計画初年度で、目標通りの観測が可能になったこと、主目標の電波現象の検出に複数回成功していること、関連する基礎研究で複数本の査読論文が出ていることより、本年度の進捗状況をおおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度、十分に性能が向上した山川望遠鏡を用いた太陽電波バーストの高分解観測を実施する。特に、自動観測可能である点を活かした定常観測に早期に移行し、より多くの電波バースト現象の検出を目指す。また既に試験観測から、数々の太陽電波バーストデータを取得することに成功している。このデータに既に目的のミリ秒バーストが含まれている可能性もあるため、試験観測のデータ解析も合わせて実施する予定である。望遠鏡及び関連する分光計技術の開発結果と、データ解析の結果はまとまり次第、順次論文化を進める。 平成28年度からは観測したデータから太陽電波バーストを自動で検出し、警報を出すシステムの構築も並行して進める。本研究では既に、デジタル分光計とバーストの自動検出を組み合わせたシステムの検討を進めており、一部のバーストだけなら十分に自動検出可能な試算結果を得ている。今後、自動検出の精度や検出の速さを調整しつつ、平成28年度中に実際の観測データに使えるシステムの構築を目指す。
|
Research Products
(14 results)
-
[Journal Article] Chromospheric Sunspots in the Millimeter Range as Observed by the Nobeyama Radioheliograph2016
Author(s)
Iwai, Kazumasa, Koshiishi, Hideki, Shibasaki, Kiyoto, Nozawa, Satoshi, Miyawaki, Shun; Yoneya, Takuro
-
Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 816
Pages: 91
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
[Presentation] Solar radio telescope AMATERAS: 6 years operation and science results2016
Author(s)
Iwai, K, Misawa, H., Tsuchiya, F., Katoh, Y., Kaneda, K., Masuda, S., Miyoshi, Y., and Obara T.
Organizer
International GEMSIS and ASINACTR-G2602 Workshop
Place of Presentation
名古屋大学(愛知県名古屋市)
Year and Date
2016-03-22 – 2016-03-25
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-