2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J09653
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
纓田 宗紀 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 教皇庁 / 教皇特使 / 教皇使節 / 代理人 / シトー会 / 教会会議 / 公会議 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用初年度となる平成27年度は、修士論文に引き続き教皇特使グイドを対象に研究を進めた。グイドが教皇特使としての活動中(1265-1267)に発給した文書、教皇とやりとりされた書簡を再検討することによって教皇特使活動の実践を把握するとともに、13世紀の教会法学者らが教皇令を注釈・注解した著作から教皇特使に関する理論的基盤を抽出した。その成果をもとに歴史学研究会ヨーロッパ中近世史部会例会(早稲田大学2015年10月)、史学会第113回大会(東京大学2015年11月)で口頭報告を行った。その後2016年1月から2月にかけてドイツ、オーストリアで史料調査を行い、グイドの発給文書のうち未刊行のものを閲覧することができた。年度末には以上の成果をまとめた論文を投稿した。これまでの調査から得られた結論は以下のようにまとめられる。1)教皇(庁)は、枢機卿のもつ経歴に鑑みて、そのときどきに抱えているいくつかの案件を処理させるにあたって適切な人物を教皇特使に任命していた。2)戦略的に任命され派遣された教皇特使には、担当管区内を自由に移動しながら自らの判断で政治的・法的決定を行うための裁量の余地が確保されていた。この主張を補強するために今後は他の教皇特使を対象に研究を進める必要がある。 上記の個人研究と並行して、13世紀のキリスト教世界を研究する際に重要な史料となる公会議決議文の共同翻訳も継続中である。平成27年度には藤崎衛(茨城大学)監修のもと、「第四ラテラノ公会議(1215年)決議文翻訳」『クリオ』29号(2015年5月)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連未刊行史料の調査を行い論文を投稿したことで、初年度の計画をまっとうすることができた。枢機卿グイドの教皇特使活動(1265-1267)を詳細に再検討した結果、戦略的に教皇特使を選任して複数の任務にあたらせるという教皇庁の外交実践のあり方が浮かびあがってきた。また、グイドの活動を考察する過程で、「13世紀における教皇庁とルンド大司教座の交渉」というサブ・テーマを設定することもできた。13世紀を通じて教皇庁との接触の度合いを強め、ラテン=キリスト教世界への「均質化」へと導かれるデンマークのルンド大司教座についての一考察を活字化する見通しが立った。 他方、投稿論文としてまとめる際に捨象したグイドの特使活動と北方十字軍との関係については、なおも検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
枢機卿グイドに関する積み残した課題に目を配りつつも、グイドの次にアルプス以北へ派遣された枢機卿ヨハンネス・ボッカマッツァの教皇特使としての活動(1286-1287)を考察することに主眼をおく。ボッカマッツァが発給した全102通の文書は、Werner Maleczek, “Die Urkunden des paepstlichen Legaten Johannes Boccamazza, Kardinalbischofs von Tusculum, aus den Jahren 1286 und 1287 (Legation ins Reich in der Spaetzeit Koenig Rudolfs von Habsburg)”, Archiv fuer Diplomatik 59, 2013, pp. 35-132に目録としてまとめられている。その目録をもとに収集した史料を検討し、教皇(庁)がヨハンネスを派遣した意図とヨハンネスの特質活動の特徴・性質を明らかにすることをめざす。
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