2015 Fiscal Year Annual Research Report
パフォーマンス向上のための行動経済学的アプローチ:運動方略最適化のための条件解明
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15J09695
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 啓示 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | タイミング一致課題 / ベイズ決定理論 / 運動出力分散 / 最適戦略 / 経頭蓋直流刺激 / 背外側部前頭前皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、行動経済学的なアプローチを用いて、リスク下の運動方略の非合理性を解明することを目的とした。実験参加者は、リスク下の一致タイミング課題を行った。この課題では、反応時間が参照時間(2300 ms)に近づくほど利得(最大100点)が向上し、参照時間を過ぎると0点となる非対称な利得関数を持つ。ベイズ決定理論により、参加者の反応分散を基に、最大期待利得が得られる最適平均反応時間を算出したところ、実際の平均反応時間と解離していることが明らかとなった。すなわち、参加者はリスク志向的な方略を採用していた。また、この方略は、非対称な利得関数を左右反転させても認められた。これらの結果は、期待利得の最大化を図る運動方略を採用できないことを示している。 次に、この非合理な方略の神経生理学的な要因の解明に挑んだ。衝動性の抑制を管理する右側の背外側部前頭前皮質に経頭蓋直流刺激を行った。右側に皮質興奮性を高める陽極刺激、左側に低下させる陰極刺激を、2000mAで20分間行ったところ、ベースラインに比べ、平均反応時間が減少し(リスクを避ける方へ反応時間が早まり)、リスク志向性が低下した。また、この減少度は、偽刺激条件の減少度とも有意に差があることが明らかとなった。さらに、統制実験により、リスクのない状況では、平均反応時間に変化が見られないことも確認した。これらの結果は、右側の背外側部前頭前皮質の興奮性水準がリスク志向的な運動方略の一因であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文が1本採択され、予定していた実験も終了した。以上のことから、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、課題条件を操作することにより、非合理な運動方略の心理学的な要因を明らかにしてく予定である。
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