2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物免疫シグナリングネットワークのダイナミクスの解明
Project/Area Number |
15J09701
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
峯 彰 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 植物免疫 / 免疫シグナリングネットワーク / 植物ホルモン / サリチル酸 / PAD4 / 遺伝子発現ダイナミクス / 罹病性 / 抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物免疫システムはPTIとETIの二段階の抵抗性反応から構成される。PTIは、病原体に抑制されてしまう脆弱な抵抗性である。結果、植物は罹病性を示す。一方でETIは、病原体に対しても有効な頑強な抵抗性である。本研究では、頑強な免疫システムの根底にある分子機構の解明を目指して、PTIとETIにおける遺伝子発現プロファイルの違いをRNA-seqを用いて詳細に解析した。当初、PTIとETIで、免疫シグナリングネットワークの構造が変化するのではないかと想定していた。しかしながら、免疫シグナリングによる遺伝子発現制御パターンを解析した結果、そのような変化は認められなかった。一方で、ETIでは免疫遺伝子の発現タイミングがPTIよりも早いことを見出した。さらに、このETIにおける迅速な遺伝子発現には免疫シグナル因子であるサリチル酸とPAD4が必要であることも明らかにした。これらの結果は、免疫反応へ向けた遺伝子発現ダイナミクスの違いが罹病性あるいは抵抗性を決定する要因であることを示唆している。また、遺伝子発現ダイナミクスを詳細に解析することにより、ETIのごく初期に特異的に発現誘導が見られる転写因子郡を同定した。これらの転写因子は、ETIにおける迅速な遺伝子発現に関与している可能性が考えられるため、現在、詳細な機能解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
免疫シグナリングネットワークの構造が変化するという当初の仮説は覆されたものの、PTIとETIにおける遺伝子発現ダイナミクスの違いを発見したことにより、頑強な免疫システムを担う分子機構に迫ることができた。さらに、当初の予定通り、ETIにおける遺伝子発現制御を担う転写因子の候補を得た。上記に加えて、植物免疫シグナリングネットワークの構造と機能に関して、以下の新規知見を得ることができた。(1)ジャスモン酸シグナリングによるサリチル酸の蓄積制御の分子機構を解明。(2)アブシジン酸の分解を介してジャスモン酸が気孔を開ける仕組みを解明。(3)アブシジン酸とジャスモン酸シグナリングによって誘導される脱リン酸化酵素がMAPキナーゼを脱リン酸化することにより免疫を負に制御することを発見。これらはいずれも論文として投稿準備中の段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
ETIにおける遺伝子発現制御を担う転写因子の候補を得たことは大きい。今後は予定通り、これらの転写因子の詳細な機能解析を行う。具体的には、機能欠損変異体や機能獲得変異体、あるいは、過剰発現体を用いて、候補転写因子の植物免疫における役割を調べる。候補転写因子の免疫への関与が確認できた場合、候補転写因子の標的遺伝子の同定と発現解析を行う。特に、ETIの初期に発現変動を示す遺伝子に焦点を当てる。また、これらの候補転写因子はETIのごく初期においてその発現が誘導されることから、プロモーターのシス因子解析や試験管内タンパク質翻訳系を用いた網羅的スクリーニングにより、その発現誘導を担う転写因子の同定を試みる。
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Research Products
(2 results)