2016 Fiscal Year Annual Research Report
ダンスの発達的起源の探求:母子間の非言語的コミュニケーションの発達認知科学研究
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15J09751
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 絵里子 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ダンス / 非言語的コミュニケーション / 母子相互作用 / 動作学習 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ダンスの根底にある非言語的コミュニケーションの発達的変遷の解明に向けて、3つの実験成果を得た。 実験1:子どもは母親の教示動作を1秒の映像遅延があるテレビ(遅延条件)で、もしくは、残りの半分を映像遅延がないテレビ(ライブ条件)を通して観察した。遅延条件とライブ条件間で子どもの模倣成績を比較した結果、遅延条件と比較してライブ条件で模倣得点が有意に高かった。また、遅延条件と比較してライブ条件において子どもの笑顔表出の時間が長かった。これらの結果は、子どもが双方向性のコミュニケーションが構築されているかどうかを判断する際に母親の動的な手がかり(反応の時間的接近性)を使用している可能性、また、子どもにおいて双方向性のコミュニケーションを通して呈示された教示動作が快刺激となり学習を促進する可能性を示唆している。 実験2:母親は、子どもの行動を2秒の映像遅延があるテレビ(遅延条件)、もしくは、映像遅延がないテレビ(ライブ条件)を通してダンスを教えた。その結果、ライブ条件と比較して遅延条件で、母親の手の振り上げが高くなった。母親は乳幼児の動的な手がかり(反応の時間的接近性)をもとに、対乳児動作を発生させていることが示唆された。 実験3: 9-11ヶ月の乳児が抽象的な動作を弁別するか、また、その弁別を1週間後に維持しているかどうか、馴化脱馴化手続きを用いて検討した。本実験の結果、乳児は、抽象的な動作を弁別し、さらに、その弁別を1週間維持していた。今後、初日と1週間後において、馴化刺激を観察しているときの乳児の運動量を分析し、乳児における動作系列の認知とそれらの学習機構の解明へと展開していきたいと考えている。 これらの知見は、ダンスの根底にある非言語的コミュニケーションの発達だけではなく、言語学習と深い関連をもつと考えられ大変意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画に従い、養育者と乳児の非言語的コミュニケーションの発達的変遷(実験1と実験2)、及び、発達初期の非言語的コミュニケーション経験がその後の動作リズムの同調や認知に与える影響を検討し、三つの主要な成果を得ることができた。しかし、行動実験を主軸として実験を行っていたため、非言語的コミュニケーション中の脳機能測定を実施するまでに至らなかった。以上の理由におおむね順調に進展していると報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に報告した研究計画に従い、行動実験を遂行することができた。最終年度では、養育者と乳児の非言語的コミュニケーションの根底となるダンス学習時の脳機能の解明、及び、養育者と乳児の相互作用中の脳機能の解明に向けたNIRS実験に取り組んでいきたいと考えている。
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Research Products
(5 results)