2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J09780
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
志甫谷 渉 名古屋大学, 創薬科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | エンドセリン / Gタンパク質共役型受容体 / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、エンドセリン受容体のリガンド認識機構の解明するために、ヒト由来のエンドセリン受容体B型(ETBR)についての構造学的研究を行っている。ETBRは21アミノ酸残基のエンドセリンによって活性化されるGタンパク質共役型受容体であり、血圧制御など体内の恒常性に関わる様々な生命現象に関与している。エンドセリン受容体は創薬標的として重要であり、ボセンタンが肺動脈性高血圧に関わる治療薬として使用されている。 これまでの研究によって、ヒト由来ETBRとエンドセリン-1との複合体のX線結晶構造解析に成功している。しかし、ETBRがエンドセリンの認識の際に、どのような構造変化を起こすのかは不明であった。そこで、今年度はETBRの不活性状態の構造決定に向けてコンストラクトの検討や結晶化を行った。エンドセリン結合型のETBRにおいては、細胞内第3ループにT4リゾチームという安定なタンパク質を挿入し、融合タンパク質として結晶化・構造解析に成功している。同じETBRの結晶化コンストラクトとアンタゴニストとの複合体の結晶化に成功していたものの、分解能が悪く構造解析に必要なデータを収集できなかった。そこで、T4リゾチームの構造的に柔軟な領域を削ったminimal T4リゾチームを挿入したコンストラクトに改変し、結晶化を試みた。その結果、ETBRのリガンド非結合型およびボセンタン結合型のX線結晶構造解析に成功した。本構造から、ボセンタンがどのようにETBRを競合的に阻害するのかが原子レベルで明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Gタンパク質共役型受容体の構造はこれまでに数多く報告されているものの、リガンド非結合型の構造は世界でわずか1例だけに留まっている。本研究では、エンドセリン受容体のリガンド非結合型を決定することによって、内在性アゴニスト/アンタゴニストの結合に伴う構造変化を初めて捉えた。これは、エンドセリン受容体を標的としたアンタゴニスト設計に役立つものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、ヒト由来のエンドセリン受容体B型の内在性アゴニスト結合型、リガンド非結合型、アンタゴニスト結合型の結晶構造を決定することに成功している。今後は、エンドセリン受容体A型の発現・精製系の検討を行い、A型選択的なアンタゴニストとの複合体のX線結晶構造解析を行う。ヒト由来のエンドセリンA型の哺乳類細胞を用いた発現に成功しており、今後大量発現の条件最適化を行う。
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Research Products
(1 results)