2015 Fiscal Year Annual Research Report
多欠損型ポリオキソメタレートを基盤とした多核金属活性点の構築と触媒特性の制御
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15J09840
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湊 拓生 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / 巨大構造 / マンガン / リング状構造 / 再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子レベルで設計した多欠損型ポリオキソメタレート (POM)の欠損部位へ金属イオンを導入することにより多核金属構造を構築し、特異な触媒特性や磁気特性を有する分子を設計・合成することを目的としている。 単量体ユニットが縮合して形成された巨大な多量体分子を、単量体に解離させた後に再度別の構造へと縮合させる再構築という構造変換は、生体系や人工系にとって重要な反応過程である。しかし、人工系において複数種の相互作用点を有する多量体構造を再構築することは非常に困難であり未だ達成されていない。有機溶媒に可溶な六欠損型POM TBA3.75H10.25[P2W12O48] (P2W12)を新規に合成し、P2W12と4当量のMnイオンを反応させることにより巨大なリング状POM (I)を合成した。単結晶X線構造解析より、IはP2W12のMn置換体のリング状六量体であり、その内径はこれまでに報告されているリング状ポリオキソタングステートと比べて最も大きいことが明らかとなった。Mnイオンに配位している有機配位子を脱離させることによりアニオン構造の再構築が進行し、より内径の小さいリング状四量体 (II)が生成した。POM I及びIIは元素分析、CSI-MS、IR、UV-Vis測定などにキャラクタリゼーションを行った。POM IIにおいては、劇的な構造再構築後にも関わらずP2W12の単量体ユニット構造が保持されており、POMの分解や異性化を伴わずに複数種の相互作用点を有する多量体構造を再構築することに初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、多核金属構造を構築するために配位子となる有機溶媒に可溶な多欠損型ポリオキソメタレート (POM)の合成と構造決定を目標としていた。有機溶媒に可溶な六欠損型POMの合成では反応条件を厳密に制御することにより、縮合や異性化が生じやすく不安定な化合物を単離することができた。さらに、六欠損型POMにMnイオンを導入することにより巨大リング状六量体の合成に成功した。また、この六量体構造を単量体に解離させた後に、リング状四量体への組み替えが可能であることを見出した。複数種の相互作用点を有する多量体構造を再構築するという、人工の分子では達成されていない重要な構造変換手法を実証することに初めて成功した。以上のように、有機溶媒に可溶な多欠損型POMの合成と構造決定にとどまらず、六欠損型POMの欠損部位への金属導入に成功し、POM多量体の再構築過程という新規で重要な知見を見出したため、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、六欠損型POMとMnイオンとの反応によって合成した六量体構造と四量体構造のキャラクタリゼーションを進める。特に超電導量子干渉計による磁気特性の評価や、サイズ排除クロマトグラフィーや超遠心分析による溶存状態の確認を行う。また、有機溶媒中における六欠損型POMと他の金属イオンとの反応も検討する。種々の反応条件を探索することにより、生成する構造や金属種の適用範囲など未解明な部分を明らかにする。さらに、合成した金属多核構造の磁気特性や触媒特性を評価するとともに、特異な磁気特性、触媒特性を有する構造の設計と合成を目指す。
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Research Products
(6 results)