2016 Fiscal Year Annual Research Report
電場を用いた誘導自己組織化による動的パターン形成制御法の開発
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15J09841
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮廻 裕樹 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 誘導自己組織化 / 制御工学 / 電子線リソグラフィ / ナノバイオテクノロジー / 脂質二重膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,事前に電子線の照射パターンが与えられたときのソフトマターの自己組織化の誘導法について研究した.特に窒化ケイ素(SiN)薄膜上に展開した脂質二重膜に対して電子線による局所電場を与えたときの自己組織化構造の誘導法について研究を行った. (1) 電子線照射による脂質膜構造の変形 DOPC(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)でできたベシクルやローブ状の脂質膜に対して電子線を照射することにより,脂質膜を可逆的に変形させることに成功した.また,イオン電流による電位降下を考慮し,電子線による応力印加の物理モデルを導出した.さらに,脂質の構成成分を変えた場合,電子線照射中に脂質膜の縁からチューブ状の構造が可逆的に成長する現象も観測された.これらのことから,電子線による局所的な電場提示によって脂質分子がつくる膜構造を可逆的に制御できると考えられる. (2) 脂質展開膜における膜流動性の2次元制御 SiN薄膜上に蛍光標識された脂質を含むDOPCの脂質二重膜を展開し,電子線を2次元的に高速走査させたときの膜流動性を調べた.電子線の照射量が少ない場合は,電子線の照射領域における蛍光が退色した後,照射領域外からの膜分子の拡散によって蛍光強度が回復したことから,膜流動性は失われていないことが確認された.一方で,電子線の照射量を多くすると,電子線照射終了後も電子線照射領域における蛍光強度が回復せず,膜流動性が失われたことが確認された.流動性が失われた領域に対してさらに電子線を照射すると,脂質分子が側方から流入し,再び展開膜を形成することができた.これらの結果を用いて,流動性のある脂質二重膜を2次元的かつ可逆的にパターニングすることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,前年度得られた電子線を用いたナノ電場印加システムのシステム同定結果を用いて,脂質二重膜の膜構造や膜流動性などのソフトマターの誘導自己組織化を実現することができた.また,電子線のスキャンにより膜流動性などを2次元的にフィードフォワード制御することも達成された.さらに,脂質二重膜の膜構造と電子線システムにおける電場のダイナミクスを連成した物理モデルを導出することもできた.これらの結果は,本研究の目的である数値シミュレーションなどを活用した電場の制御則の開発へつながると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた結果を用いて,有限要素法などを用いた数値シミュレーションにより,ソフトマターの誘導自己組織化制御法の改良を行う.また,蛍光顕微鏡から取得される画像を用いて実時間ビジュアルフィードバック制御をすることにより,再現性の高い誘導自己組織化を実現することを計画している.また,開発した制御則の制御時間,再現性などに関する評価を行い,制御を最適化することを検討する.
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Research Products
(13 results)