2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J10041
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 禎暢 横浜市立大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 膵島移植 / 再生医療 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の再生医療技術の課題は,様々な前駆細胞間の情報伝達機構の時空間的動態を再現できなかったことである.これを可能にするため,近年我々は,間葉系細胞依存性の収縮に基づく自己組織化培養法を開発した(Takebe T, et al. Cell Stem Cell, 2015).本年度は,この培養法を成人から分離した組織片(主に膵島など)またはヒト人工多能性幹細胞由来のオルガノイドに応用し,組織内の血管新生をin vitroで誘発した.その結果,この自己組織化培養法を動物由来の組織片またはヒト多能性幹細胞由来オルガノイドに使用することによって,血管内皮細胞を含む長径1,000μmにも及ぶ組織形成に成功した.パラクリン効果を調べるため,膵β細胞を使ってトランスウェル培養実験を行った結果,膵β細胞は血管内皮細胞と間葉系細胞の存在下でもっとも効率よく増殖した.血管内皮細胞を伴ったマウスまたはヒト膵島(血管化膵島)の自己組織化は,高密度な血管構造を極めて早期(48時間)に再構築することにより,移植後の生着率を著しく向上させた.一方,膵島単独移植されたマウスでは,膵島内の再灌流や形態的変化が観察されず,生存している膵島数も経時的に減少した.臨床的に有意義とされる従来の移植手法に比べ,血管化膵島移植は劇症1型糖尿病モデルマウスの治療に有効であった.膵島の生着率,インスリン分泌能,グルコース反応性等の複数の作用機序解析の結果より,血管化膵島の臨床応用によって,長期インスリン離脱ができることが示唆された.つまり,我々のアプローチは,劇症1型糖尿病の根治的治療の主流となり,患者一人の治療に必要なドナー数を減らすことにつながる有望な手段といえる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては,マウス及びヒト組織(主に膵島など)を用いた血管化組織の作製やその特性解析,並びに小動物を用いた移植とその課題整理などを適切に実施し,重要な成果を多数創出していることから,基礎研究の成果を臨床応用に結びつけるプロセスが円滑に進んでいると考えられる.これらの研究成果は,学会シンポジウム等にて発表を行い,権威ある国際学術誌に論文投稿を行った.
|
Strategy for Future Research Activity |
今回のアプローチの課題として,2種の異なる細胞,特にヒト臍静脈内皮細胞の使用が挙げられる.提供者から遺伝的背景の異なる受容者に移植された血管内皮細胞は受容者の免疫システムによって拒絶される可能性がある.これを最小限にする方法として,免疫適合性または自己多能性幹細胞を使った内皮前駆細胞の作製が考えられる.しかし,多能性幹細胞由来細胞の臨床応用以前に解決すべき問題が幾つかある.たとえば,残存未熟細胞による奇形腫や他の腫瘍の発生リスクを完全に除外することは出来ない.そこで,近年行われているカプセル化装置を使った研究が我々の懸念を軽減してくれるかもしれない.この技術により,移植にまつわる物理的および生理的な問題が克服されたことが報告されており,ひいては画像診断,生検,局所免疫調節,そして幹細胞治療にむけた安全なアプローチの開発につながっている.本研究で報告した我々の血管化技術は,他の研究グループの多能性幹細胞や移植技術を組み合わせることで,従来の膵島移植療法に対し反応不良な患者へ代替的移植アプローチを提供できる可能性がある.
|
Research Products
(5 results)