2015 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素水素化反応によるメタノール合成反応機構解明およびそれに立脚した触媒開発
Project/Area Number |
15J10157
|
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
多田 昌平 成蹊大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | メタノール / 二酸化炭素 / 水素化反応 / 銅 / ジルコニア |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、含侵法により調製した担持Cu触媒における担体のメタノール生成速度に対する影響を調査した。Cu/TiO2、Cu/ZnO、Cu/CeO2触媒を用いた場合は、メタノールの生成はほとんど観測されなかった。これに対し、Cu/ZrO2触媒のメタノール生成速度はCu/SiO2触媒の3倍程度となった。このことから、ZrO2がCO2からのメタノール合成反応に適した担体であることが示唆された。
次に、担体上でのCuナノ粒子の形態を緻密に制御したモデル触媒(2.3wt%Cu/SiO2と2.6wt%Cu/ZrO2)を調製し、ZrO2の担体効果をより詳しく調べた。触媒は、Cu前駆体 [CuOtBu]4を担体表面に存在する水酸基と反応させる方法(グラフト法) により調製した。この手法により、平均粒子径3 nm程度のCuナノ粒子を担体上に高分散させることに成功した (Cu/SiO2触媒: 1.8±0.6 nm、Cu/ZrO2触媒: 2-4 nm)。次に露出金属Cuの表面積を化学吸着法の一種であるN2O滴定法により測定した。Cu担持量およびCu粒子径に違いがないにも関わらず、Cu/ZrO2触媒のN2O消費量がCu/SiO2触媒のN2O消費量より大幅に少なかった。このことから、Cu-ZrO2界面の相互作用により利用可能な露出金属Cu表面積が減少したと考えられる。
最後に、メタノールおよびCOの生成速度を表面露出金属Cu量で規格化したターンオーバー数(TOF)を比較した。CO生成に関して、Cu/SiO2のTOFはCu/ZrO2のTOFと違いがみられなかったため、COの生成は金属Cu上で進行することが示唆された。一方でメタノール生成では、Cu/ZrO2のTOF はCu/SiO2のTOFより高くなったため、Cu-ZrO2界面の相互作用がメタノール合成反応を活性化させると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画では、以下の3つのテーマを予定していた。 1)ZnO上でのCuナノ粒子形成:Cu/ZnO触媒をグラフト法により調製する。 2)N2O滴定法によるCu表面積評価:Cu/SiO2触媒におけるN2OとCuの反応性を検討し、N2O:表面Cuの化学量論比を見積もる。 3)メタノール合成反応試験:メタノール合成反応における律速段階の反応活性点に関して考察する。 1)に関しては、ZnOよりも適した担体物質としてZrO2を発見したため、ZnOでの検討は行わなかった。しかし、[CuOtBu]4を用いたグラフト法により、Cuナノ粒子をZrO2およびSiO2上に形成させることに成功した。2)に関しては、本年度の検討ではN2O:表面Cuの化学量論比を結論付けることができなかった。3)に関しては、まずメタノール合成反応装置のセットアップを行い、高圧固定床流通式反応装置を用いてメタノールを検出することができるようになった。また、N2O滴定法とメタノール生成速度からターンオーバー数を算出した結果、メタノールおよびCOの反応活性点は、それぞれCu-ZrO2界面および金属Cu表面であることが示唆された。 以上より、計画した3つのテーマのうち2つは達成され、残りの1つは検討中であることから、昨年度の研究はおおむね順調に進展していると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下のテーマを行う。 2’)N2O滴定法によるCu表面積評価:Cu/SiO2触媒におけるN2OとCuの反応性を検討し、N2O:表面Cuの化学量論比を見積もる。 4)反応中間体の特定 5)insitu high pressure XASによるCuおよびZrの微小構造特定 2’)に関しては昨年度からの継続の課題である。今年度では、種々の吸着実験(水素吸着など)を行い、それらの結果と理論化学計算を比較する。これにより、N2Oと金属Cuの吸着特性を考察し、N2O:表面Cuの化学量論比を見積もる。4)および5)に関しては年次計画により予定されていたものである。まず4)に関しては、高圧反応を行った触媒粉末を用いて、IRやssNMRを行い、どのような反応中間体が生成されるか特定する。加えて、ラベリングされたCO2や重水素を用いて水素化反応を行うことで、反応経路を追っていく。5)に関しては、2016年7月に、スイスにおいて技術者とともに行う。この実験により、Cu/ZrO2触媒上の反応活性点に関する知見を得ることができると予想している。
|
Research Products
(8 results)