2015 Fiscal Year Annual Research Report
肝臓グリコーゲン貯蔵の充満を引き金にした新規脂肪酸生合成促進シグナルの解明
Project/Area Number |
15J10165
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
佐藤 友紀 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 肝臓グリコーゲン / 脂肪酸生合成 / SREBP-1c / O-GlcNAc化 / LXR |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、食後の脂肪酸生合成酵素の発現量変化はインスリンによって制御されていると考えられてきた。しかし近年、インスリン分泌不全モデルにおいても食後の脂肪酸生合成酵素の発現量増加が生じることが明らかになった。これらの背景より、本研究では「インスリンを介さない脂肪酸生合成促進機序の解明」を目的に検討を行った。 予備検討において、肝臓中脂肪酸生合成酵素であるsterol regulatory element-binding protein (SREBP)-1cなどの発現量が血中インスリン濃度の変化パターンと一致しないこと、さらに肝臓グリコーゲン蓄積後にSREBP-1cの発現量が増加していることが明らかになった。SREBP-1cは核内受容体liver X receptor (LXR)によって転写が促進され、また、LXRはヘキソサミン経路の最終代謝産物UDP-GlcNAcを利用した翻訳後修飾、O-linked β-N-acetyl glucosamine (O-GlcNAc)化によって活性化される。それらの知見から、糖質中間代謝産物量、タンパクのO-GlcNAc化に関わる酵素、O-GlcNAc化タンパク量を継時的に測定した。糖質中間代謝産物であるグルコース-6-リン酸、フルクトース-6-リン酸の濃度は再摂食直後から増加した。ヘキソサミン経路の律速酵素glutamine fructose-6-phosphate amidotransferase (GFAT)の遺伝子発現量は摂食直後から開始し、肝臓グリコーゲン量が蓄積した再摂食後4時間で最高値を示した。O-GlcNAc化タンパク質量は有意ではないが再摂食開始とともに増加傾向を示し、再摂食4時間後に最大値を示した。SREBP-1cの発現量とタンパク質のO-GlcNAc化の経時変化を比較した際、タンパク質のO-GlcNAc化に増加傾向が見られた後にSREBP-1c 発現量が増加していることから、再摂食後の脂肪酸生合成はヘキソサミン経路への糖質流入促進およびO-GlcNAc化によって制御されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、SREBP-1c mRNA発現量の変化が血中インスリン濃度の変化とは一致しないこと、肝臓グリコーゲン蓄積と何らかの関連があることが明らかになった。さらに糖質中間代謝産物量、タンパクのO-GlcNAc化に関わる酵素、O-GlcNAc化タンパク量の測定により、再摂食後の脂肪酸生合成はヘキソサミン経路への糖質流入促進およびO-GlcNAc化によって制御されている可能性を見出した。今後さらに正確なデータを得るためにプロトコールの改善などを行っていく予定である。アイソトープトレーサーによる代謝測定は、実験手技の開発に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトコールを変更し、給餌を4時間のみにして検討を行ったがそれでも個体間でのばらつきが大きく正確なデータ採取が困難となっている。糖質摂取量および摂取タイミングの差は肝臓内の糖質代謝産物量(G6PおよびF6Pなど)および肝臓グリコーゲン蓄積に大きな影響を与えてしまう。そこで今後は、マウスに一定量の糖質を投与(経口もしくは腹腔内)することで、個体間での糖質摂取量および摂取タイミングの差を改善した再摂食モデルを作製し、肝臓グリコーゲン量および糖質代謝産物量と脂肪酸生合成酵素の発現変化の関連性を明らかにしていく予定である。
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