2015 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質糖鎖修飾位置周辺の立体空間を対象とした糖種判別法の開発
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15J10239
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
越中谷 賢治 明治大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | バイオインフォマティクス / 翻訳後修飾 / タンパク質 / 糖鎖 / 二次構造 / 立体構造 / PSSM / 判別法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、「糖鎖修飾の立体構造における物理科学的環境の調査」として、修飾を受けたタンパク質の空間的アミノ酸出現傾向解析・空間的モチーフの発見を行った。本研究では、各糖種を有するタンパク質結晶構造の数を考慮し、フコース (Fuc) 修飾とアセチルグルコサミン (GlcNAc) 修飾を対象とし、(1) 糖鎖分子周辺、(2)糖鎖修飾位置周辺を調査した。 糖鎖修飾されているタンパク質結晶構造を対象に、糖鎖分子および糖鎖修飾位置から一定距離に存在するアミノ酸の出現傾向を調べた。Fuc修飾の周辺には、芳香族アミノ酸残基の中でもPhe残基が高い出現傾向を示していた。また、Cys残基も同様に高い出現傾向を示しており、6.0Å以内では必ず周囲に存在していることが確認された。一方で、GlcNAc修飾ではPhe残基以外の芳香族アミノ酸残基が多くみられ、とりわけTyr残基が高頻度で出現していた。また、Ala残基やVal残基などの疎水性アミノ酸残基も高頻度で周辺に出現していた。糖鎖認識タンパク質は糖鎖認識部位の周辺に芳香族アミノ酸残基が存在し、適切な糖鎖の選択性に寄与していることが明らかにされている。それゆえ、FucやGlcNAc分子周辺で見られた芳香族編アミノ酸残基の存在はそれぞれの糖鎖修飾の選択性に寄与している可能性が示された。これらの特徴は糖鎖分子、糖鎖修飾位置周辺ともに共通しており、糖鎖修飾の有無がわからないタンパク質結晶構造を対象とした場合でも、糖種判別が可能であることを示した。上記の (1) について、国際学会(2015年7月 FEBS congress)のポスター発表のために要旨を投稿したところ、審査によって口頭発表に採択された。国際学会(2016年1月 PSB)にて、(1) と (2) を併せてポスター発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「タンパク質糖鎖修飾位置周辺の立体空間を対象とした糖種判別法の開発」に向けて、平成27年度は当初の実施計画通りに、空間的アミノ酸出現傾向の解析・空間的モチーフの発見のためのバイオインフォマティクス研究を行った。修飾された糖鎖分子周辺の空間的アミノ酸出現傾向から糖種ごとに異なる芳香族アミノ酸残基を明らかにした。さらに、上記の研究を通して着想を得た、タンパク質の細胞内局在に基づいた糖種の特徴について予備的な調査を行った。その結果、タンパク質の局在化経路に応じて、修飾される糖種のパターンが異なり、これらの特徴が糖種判別法に応用できる可能性が示された。上記の特徴をパラメータとして用いることにより、判別精度の向上や糖種から局在化経路の予測といった応用が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に則って空間的なアミノ酸出現傾向をパラメータとし、糖種判別法の開発を行う。加えて、以下の方策を含めた幅広い研究の発展を図る。 (1)本年度に発見したタンパク質の局在化経路に基づいた糖種の特徴を加味することで、糖種判別に加えて糖種パターンからタンパク質の局在化経路を予測する。 (2)本研究計画を通して明らかにした糖種ごとの特徴について、実験的なアプローチも視野に入れる。
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Research Products
(3 results)