2015 Fiscal Year Annual Research Report
イヌリンパ腫の病態におけるCD44およびそのバリアントアイソフォームの役割
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15J10302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茂木 朋貴 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 犬 / CD44 / CD44v / リンパ腫 / ESRP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は犬リンパ腫の病態において、通常型CD44(CD44s)およびそのバリアントアイソフォーム(CD44v)を発現する細胞が薬剤耐性に関わり、再発や予後の悪化に繋がる事を証明することを目的としている。本年度は臨床例におけるCD44s, CD44vの検出とその予後評価とCD44sおよびCD44v発現犬リンパ腫細胞株の作出および性状解析を行った。 まず犬におけるCD44v発現量を相対比較したところ、犬の高悪性度B細胞性リンパ腫ではCD44v3, v6, v7の発現量が高い症例群が存在し、それらでは治療奏効率の低下、無増悪生存期間および全生存期間の短縮が認められた。これらの結果からCD44v3, v6, v7が高発現の症例は予後が悪いことが示唆された。またCD44v高発現症例のリンパ節では既存の抗がん剤耐性に関わる遺伝子であるABCB1, ALDH1, MGMT, MVP, SOD2の発現量に有意な差は存在しなかった。 続いて臨床例におけるCD44vパターンの発現を探査した。バリアント領域を増幅するプライマーを設計し、配列決定したところ複数の配列を得た。これらの配列は健常犬とリンパ腫犬では異なるパターンを示した。これらはヒトやマウスで発現しているCD44v3-10などと異なり、犬では比較的短い配列が発現していることがわかった。 さらにCD44v3, v6, v7の全ての発現量が高い4症例と発現量の低い5症例のcDNA マイクロアレイ解析を行った。これによりCD44v高発現症例ではESRP1遺伝子の高発現を認めた。その定量解析のため、CD44v高発現16症例、低発現31症例のESRP1遺伝子発現量をReal-time PCRで解析したところ、CD44v高発現症例で有意に高い発現量を認めた。これらの結果より、CD44vの発現調節はヒトやマウスと同様にESRP1が担っている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画はCD44vの細胞株の作出とその性状解析を中心とし、臨床例における解析は症例数を集め次年度以降に行う予定であったが、病院との密な連携により臨床例の蓄積が比較的早期に確保できたため、CD44v高発現症例は予後が悪いという結果が示すことができた。またCD44v高発現症例ではヒトやマウスと異なるバリアントが発現していることが示された。 CD44v高発現細胞株は犬において存在しなかったため、新規に全長をクローニングし複数のCD44vに対する強制発現系を作出した。これらの系ではCD44vタンパク質の発現も確認できており、一部の細胞では薬剤耐性を評価する試験も完了している。 また当初では予想されなかったが、ESRP1がCD44vの発現調節を行っている可能性を実際の症例犬から見い出し、ESRP1強制発現系におけるCD44v発現変化の実験も進行中である。 さらに次世代シークエンサーにおける解析は各症例における変異解析まで完了しており、残る作業は群間における変異を比較することのみである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はCD44v強制発現株における各種抗がん剤への感受性を調べるとともに、これらタンパク質によるシグナル変化を探査する予定である。共発現解析用にGFP融合CD44v強制発現系の作出も完了しており、より精密に相互作用などを調べられるようになった。シグナル変化を観察できることにより、シグナルの阻害物質により予後の悪い犬のCD44v高発現高悪性度B細胞性リンパ腫に新たな治療ターゲットが見つかる可能性が考えられる。 また次世代シークエンサーによる解析によってCD44v高発現の原因となる遺伝子変異が見つかる可能性があり、これより初診時において遺伝子変異を検出することによって予後の悪い症例を識別できる可能性があるものと考えている。
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Research Products
(1 results)