2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J10372
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 智哉 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 小惑星 / レゴリス / 表面更新 / 粉体対流 |
Outline of Annual Research Achievements |
小惑星イトカワにおいて、振動を受けた粉粒体に生じる対流現象(粉体対流)の実験観測を基に「隕石衝突起源の振動の繰り返しによってレゴリス層(小惑星表面を覆う砂礫のような堆積層)が流動化し対流する」現象が仮説として提案されている。本研究の目的は、上記の「レゴリス対流」仮説の実現可能性を定量的に評価することにある。「レゴリス対流」仮説の検証は、小惑星表層の進化史を解明するために重要な研究テーマの一つである。「レゴリス対流」仮説を検証するためには,レゴリス対流により表面を更新するために必要な時間(タイムスケール)を見積もり,それを小惑星の寿命等の特徴的タイムスケールと比較する必要がある。そのため、本研究では、 (1)レゴリスのような粉体物質が振動を受けた時に発生する粉体対流の対流速度と振動や重力に対する依存性を室内実験で調べること (2)(1)で得られた結果と先行研究のモデルを用いて「隕石衝突に誘発される粉体対流効果による表面更新」モデルを構築し、その実現可能性を評価すること の2点を計画している。 今年度は,研究内容(2)について、小惑星表面でのレゴリス対流効果による表面更新のタイムスケールを算出する数値的および半解析的モデルを世界に先駆けて開発した。モデルによる推定の結果、小惑星表面のレゴリス層は天体衝突起源の振動によって流動化し、対流することにより更新される可能性があることを明らかにした。得られた成果は論文にまとめられ、国際誌Icarusで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で挙げた2つの研究内容について、その進捗状況を述べる。 (1)では、報告者は粉体層内部を可視化し、振動を加えた時の粉体層の挙動を調べる実験を予定していた。粉体層内部の可視化の実験技術は報告者の所属する研究室では確立されてないため、報告者は台湾の中央研究院物理研究所を訪問し、可視化の実験技術の習得に努めた。しかし、台湾での実験活動を通じて、習得に努めていた可視化の実験技術では振動を加えた粉体に生じる対流現象を調べることは困難であることが改めて分かった。 (2)では、上述のようにモデルの構築およびレゴリス対流仮説の実現可能性の検証に成功した。粉体対流効果によるレゴリス層更新のタイムスケールを推定するためには、小惑星上で粉体対流によって運動するレゴリス粒子の速度(対流速度)を推定することが重要となる。我々は、これまでの研究で、ガラスビーズを用いた室内実験から対流速度を測定し、対流速度と重力・振動の関係則を得ていた。この関係則は真空環境や容器壁の影響が考慮されてない単純なものである。しかし、先にレゴリス対流による表面更新過程の全体像を把握しておくことは重要であると考え、既存の実験結果を用いて、レゴリス対流による表面更新モデルを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で、簡単ではあるが、「隕石衝突に誘発される粉体対流効果による表面更新」モデルを構築した。そのため、来年度はモデルの改善等を進めていきたいと考えている。 具体的にはモデルの構成要素の一つである、粉体対流現象に関する実験を行っていく予定である。すでに述べたように、振動を受けた粉体層の可視化を行う方向性は、費用面や残りの研究期間を考慮し、取りやめることを考えている。代わりに、今後は減圧環境下での粉体対流速度を測定する実験等を行うことを考えている。
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Research Products
(5 results)