2016 Fiscal Year Annual Research Report
4H-SiC熱酸化界面構造の理解に基づくMOSFET高性能化のための材料設計
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15J10704
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平井 悠久 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | パワーエレクトロニクス / 炭化ケイ素 / MOSFET / 熱酸化 / 移動度 / 二酸化ケイ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
パワーエレクトロニクス分野における電力損失削減のために、炭化ケイ素半導体(SiC)が注目を集めている。本研究では要素素子の一つであるMOSFETにおいて、SiCを用いた高性能MOSFETを形成するための二酸化ケイ素(SiO2)-SiC界面の電気特性の向上を目的として、界面近傍の化学分析に基づくプロセス設計を行っている。昨年度はSiC-MOSFETの形成プロセスを確立し、これを用いてMOSFET形成プロセスが素子性能に与える影響を評価した。特に、高温処理が必須と考えられていたSiC-MOSFET形成プロセスに対し、測定手法に工夫を施すことで低温のみで作成したMOSFETを評価し、高温処理が基板品質に与える影響を評価した。本年ではこれらの課題を継続し、特に酸化雰囲気で行う処理がMOSFET移動度に及ぼす影響を評価した。その結果、SiCを酸化消費することで基板品質の変化が起き、MOSFETにおけるチャネル移動度が劣化することがわかった。昇温脱離ガス分析法と二次イオン質量分析法を用いることで実際に酸素(O2)が基板表面領域に取り込まれていることが示唆されており、基板中へ余剰の酸素が侵入して欠陥を形成し、移動度劣化に繋がった可能性がある。また、これらの実験結果の考察に基づき、酸化雰囲気の酸化力制御が重要であると考え、酸化剤として広く用いられるO2に加え、水(H2O)を混合した雰囲気について評価を行った。その結果、O2とH2Oの混合による雰囲気制御によってMOS界面品質に大きな違いが現れることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年度目の研究結果から、SiC-MOS界面の品質制御には酸化力の制御が重要と考え、O2とH2Oの混合雰囲気について評価を行った。SiC-MOSデバイスの劣化要因の一つとして、界面近傍の酸化膜中の欠陥準位の影響が指摘されているが、本研究で注目したO2とH2Oの混合度合いによって、特に酸化膜中の欠陥準位の応答が1-2桁程度変化することがわかった。現段階ではこれらの理解に基づいて、電界ストレスによって起こるデバイス特性の変動について系統的に調査中であり、近年の技術では移動度と信頼性がトレードオフであるSiC-MOSFETにおいて、信頼性を損なうこと無く移動度を向上させることができることを示唆する実験結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
O2+H2OプロセスによるSiC-MOSFETの高品質化について系統的な調査を続け、品質向上メカニズムの解析を、酸化膜中欠陥およびその他の因子の可能性も含めて検討する。これに際しては、従来行われてきたH2Oのみのプロセスとの比較が重要であるが、O2+H2Oの混合割合を変えながら評価することで明らかにできる。また、これらで作成したMOSFETの移動度について、三年度目の計画である散乱機構の解析に着手する。散乱機構解析には室温以下で素子特性の評価を行うことが有効であるが、これに際しては二年度中に導入した低温評価システムを用いて直ちに開始することができる。また、散乱機構解析において、電流に寄与している可動電荷と、欠陥準位に捕獲されて電流に寄与していないトラップ電荷を区別して、可動電荷の電流成分に解析を行うことは物理的モデルを用いたSiC-MOSFETのパラメータ解析において非常に重要である。このためには、磁場を用いることで電流に寄与している可動電荷の量を直接測定しながらMOSFET評価を行うホール効果を用いた移動度解析が有効である。所属研究室内でも評価が可能だが、現在同研究分野にホール効果を用いた研究に注力しているグループがあり、協力して評価を進めることも視野にいれ、実施計画を立案中である。
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Research Products
(5 results)