2015 Fiscal Year Annual Research Report
英語教師が母語を効果的に用いる授業内発話理論の構築と実践による検証
Project/Area Number |
15J10750
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石野 未架 大阪大学, 言語文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 母語 / 英語による英語の授業 / 会話分析 / 談話分析 / 教師 / 実践知 / 談話標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の中等教育学校における英語教師が授業を実践する際に用いる母語の効果的な発話理論を構築し、その理論を実践の中で検証することである。この目的を達成させるため、平成27度前半はデータ収集を中心に行った。約1年に渡り近畿圏および首都圏を中心とする公立中等教育学校計11校でフィールドワークを行い、実際の英語の授業への参与観察と録画、そして外国人指導助手を含む教師へのインタビューデータを収集した。平成27年度後半からは研究活動の主軸を分析作業に移行させ、以下の分析結果を得た。 1)教師の英語発話文の中で内容語として用いられる母語が学習者の理解を促し、授業の言語規範の維持に有効に働くこと。 2)授業内で教師が母語を使用した後に再び使用言語を英語に戻し、そのまま英語に維持する手段として母語と結びつきの深い特定の談話標識が有効に働くこと。 3)授業秩序維持という目的においては母語の特定の単語を内容語として用いることが有効に働くこと。 以上の分析結果に関連した研究成果は査読付きの学会にて口頭発表を行い、学会参加者から分析の妥当性や知見の有用性について多くの助言やコメントを得た。更に得られたコメントや助言を基に内容を修正し、研究成果として論文にまとめて各学術誌に投稿した。1)の結果については大阪大学言語文化研究科共同研究プロジェクト2015の研究成果物として平成28年度中に公刊予定、2)の結果については査読付き学術雑誌「社会言語科学」にて査読中、3)の結果については現在国際誌で査読中である。また、母語の効果的利用の分析に関連した研究成果として、会話分析的手法を用いた英語教師の授業実践知を記述し、論文にまとめたものも平成27年度中に受理され、査読付き学術雑誌「日本教育工学会論文誌」第40巻第1号に掲載予定(平成28年6月)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画内容は以下の通りであった。 ①実際の学校教育現場におけるデータ収集に着手すること。②秋以降には分析作業に着手すること。③年度末までに国内英語教育系の学会で得られた知見を発表すること。④学会で得たフィードバックを基に研究成果を各教育関連分野の学術雑誌に投稿すること。 上述4点の計画内容に沿って進捗状況を概観すると、 ①については、今年度中に計11校の国内公立中等教育学校で約60時間分の授業録画データ、及び教師へのインタビューの録音データ、そしてフィールドノーツ等を収集しており、おおむね完了している。②については、平成27年度後半から分析作業に入っており、3点研究実績概要部分で挙げたような代表的な分析結果が得られているため、おおむね進捗したと言える。③については、国内の査読付き学会で口頭発表1件、国内で行われた英語教育学系の国際学会で口頭発表1件、及びオーストラリアの国際学会で口頭発表を1件終えており、おおむね進捗したと言える。④については現在国内査読付き学術雑誌で1本掲載が受理1本は査読中、査読付き国際誌では1本投稿・査読中のものがある。 以上の進捗状況から、平成27年度の研究はおおむね順調に進捗しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降の研究推進方策の主眼として新たな分析手法の導入を予定している。導入を計画している研究手法は会話分析という手法である。会話分析とは、教師と生徒の相互行為という観点から教師の発話を分析可能にする分析手法である。この会話分析は、平成27年度の研究成果発表においても学会参加者や雑誌の査読者を含む多くの研究者から提案を受けた手法であり、本研究で教師の効果的な発話の効果というものを学習者の理解や学びの促進という点で捉えていくうえでも相互行為的な視点による会話分析の導入は必須である。 従って、平成28年度以降は会話分析的手法による教師の効果的な母語を用いた発話理論の構築へのアプローチを試みる。更にこの分析手法の分析技術の精緻化を行うために平成28年度秋以降にアメリカ合衆国カリフォルニア大学の研究センターCenter for Language、Interaction、 and Culture (CLIC)での研究推進を計画している。CLICには会話分析における連鎖分析の創始者が在籍している研究所であり、世界中から会話分析研究者が集まる研究施設である。ここでの研究指導の機会を得ることによって、本研究の分析結果が更に精緻化されることと、会話分析研究と教育の分野において著名な海外研究者たちとの情報交換を行うことを狙いとする。 以上の理由から、今年度は去年度に引き続き分析技術の精緻化を行いつつ随時分析から得られた知見の成果発表を行い、更に国際的な研究発信に向けて国際学会での発表を積極的に行っていく。まとめると、平成28年度は以下のような研究推進方策となる。 ①国際学会での研究発表を2件以上を行い、研究成果の発信領域を広げる。②研究手法において著名な海外研究者と活発な意見交換を行い、分析技術の精緻化を行う。③発表した研究成果を1本以上国際誌に投稿し、国外へ研究成果を発信する。
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