2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J10793
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 要一郎 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 『サッダニーティ』 / 『サッダニーティ・ティーカー』 / 『サッダッタベーダチンター』 / パーリ文法学 / 『カッチャーヤナ文法』 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、課題であったパーリ文法学文献『サッダニーティ』の、序文等に見られる記述から、著者アッガヴァンサの著述意図を論じた。彼は、自らの著作の目的を、仏の教説の補助を第一義とするものと宣言しており、自著が文法学文献でありながら、文法学文献の価値を相対的に低いものと見なしている点を確認した。聖典の真なる意味に到達できるのは、悟りに至った聖者だけであり、自身を含めた凡夫である文法学者たちにはそれが不可能であるという思想がその背景と考えられる。その不可能性は、自著の不完全さに対する自覚として表現され、彼は自著に対する批判を広く受け入れる態度を示す。このような、一種の「実証的」な文法学への志向に注目し、論文として発表した。 このような彼の聖典観と比較するべく、『サッダニーティ』よりもやや後代に位置すると考えられている文献『サッダッタベーダチンター』内に見られる、聖典恒常論者の議論を読み解いた。同書に見られる聖典恒常論者たちは、上座部仏教の伝統的教理とは反する形で、敢えて言語は恒常であり、聖典は始まりを持たず永遠であると主張するグループである。従来は全く注目されることがなかったこの論師たちの議論について、二度の学会発表を行った。 また、『サッダニーティ』に先行し、パーリ文法学文献における現存最古の著作『カッチャーヤナ文法』の最初の規則に対する諸注釈を読み解いた。ある段階で『カッチャーヤナ文法』それ自体が、自らを「仏の言葉」であると自称するようになる点に着目し、国際学会で発表した。 更に去年度より引き続き『サッダニーティ・ティーカー』の校訂を進めている。現在貝葉165枚の一通りのデータ入力が終了している。現在は再度写本と照合し、読みの確認と、引用箇所の特定などを進めている。この注釈の理解をもとに、『サッダニーティ』の翻訳も修正を行っている最中である。
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Research Progress Status |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(5 results)