2015 Fiscal Year Annual Research Report
内皮細胞由来微小粒子による炎症制御機構の解明と応用
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15J10795
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 啓介 東京大学, 農学生命科学, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 腫瘍血管内皮細胞 / リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素 / プロスタグランジンD2 / 癌増殖 / 血管新生 / 血管透過性 / IL-1β / TNFα |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスにB16メラノーマを皮下移植したのち、増殖した癌からTECを単離した。TECにおける炎症メディエーターやCOX、各PGSの発現量が、正常な内皮細胞と比べてどの程度変化しているのかについてreal time PCR法を用いて解析した。その結果、prostaglandin D2(PGD2)を合成するリポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS)の発現量が、TECで10倍以上と顕著に増加していることを発見した。採取した癌組織の免疫染色を行ったところ、L-PGDSはTECのみに存在していた。そこでL-PGDSが癌の血管、及び癌の増殖に与える影響について検討した。 L-PGDS遺伝子欠損マウス(L-PGDS-/-)を作成し、L-PGDSが癌の増殖に与える影響を検討した。皮下にメラノーマを移植したところ、L-PGDS-/-では野生型マウス(WT)と比べて癌の増殖が有意に早かった。癌組織内部の形態学的な変化をHE染色によって観察したところ、L-PGDS-/-では癌組織内部の壊死層が減少しており、アポトーシス細胞数もWTと比べて有意に減少していた。 L-PGDSがTECに局在していることから、癌血管の性質や機能の解析を行った。L-PGDS-/-の癌では、TECの数とフィブリノーゲンの血管外漏出量がWTと比較して有意に増加しており、L-PGDSの欠損が癌血管の新生と透過性を亢進することが明らかとなった。 最後に、単離内皮細胞を用いてL-PGDSの生成物であるPGD2が内皮細胞の機能に与える影響を検討した。PGD2の処置は内皮細胞の透過性と管腔形成を顕著に抑制した。 以上の結果より、癌細胞の刺激を受けたTECは、L-PGDSの発現を誘導してPGD2を産生し、自身の透過性と新生にブレーキをかけて、癌細胞への栄養や酸素の供給を制限することで、無秩序な癌の増殖を抑制していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は腫瘍血管内皮細胞におけるプロスタグランジン類や、その他の炎症メディエーター発現量を網羅的に解析しており、腫瘍血管の特徴を知ることができたため。 網羅解析の結果、L-PGDSが癌の血管形成に大きく関わっていることを見出し、新規性のある発見ができたため。 また、L-PGDSが癌の血管に作用することで癌の血管新生を抑制性に制御するという、癌増殖におけるL-PGDSの新たな機能を明らかにしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は他のプロスタグランジン類やその合成酵素が腫瘍血管内皮細胞の機能に与える影響を検討するとともに、他の臓器や病態における内皮細胞の機能についてもより詳しく解析していていきたい。
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Research Products
(7 results)