2015 Fiscal Year Annual Research Report
カチオン性ナノ空間による高選択的な分子認識と光触媒反応
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15J10827
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
矢崎 晃平 東京工業大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | アクリジニウム骨格 / カチオン構造体 / 自己集合 / アニオン内包 / カプセル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的・内容 本研究では、カチオン性の多環芳香環骨格を有する新規ホスト分子を構築し、その分子内包能を明らかにした後、光触媒反への展開を目指した。これまで我々の研究グループでは、アントラセン環骨格を有する湾曲型ビスピリジン配位子を共有結合で架橋し、カチオン性のボウル状及び、チューブ状分子の合成および分子認識能を報告している(K. Yazaki, M. Yoshizawa et al., Chem. Commun., 2013, 49, 1630, K. Yazaki, M. Yoshizawa et al., Nature Commun., 2014, 5, 5179)。本年度は、アクリジニウム骨格を導入したジカチオン性ビスピリジン配位子を合成し、これとPd(II)イオンとの錯形成により、M2L4カプセル錯体の構築を達成した。また、その分子認識能を明らかにしたので報告する。 (1)カチオン性構造体の構築 新規ビスピリジン配位子は、アクリドンを出発原料として2段階の反応により合成した。この配位子とPd(II)イオンを2:1の比率で混ぜることで、12価のカチオン性M2L4カプセル錯体の構築を達成した。また、X線結晶構造解析の結果から、新規カプセル錯体は、8つのアクリジニウム骨格に囲まれた約1nmの内部空間を有することが明らかになった。また、Pd(II)イオンとジカチオン配位子の比率を1:1に変えることにより、8価のM2L4チューブ錯体の構築にも成功した。 (2)電子豊富なゲスト分子の内包 カチオン性M2L4カプセルは、水中でアニオン性のトリフルオロボレート塩を内包した。その内包状態は、各種NMRスペクトルにより明らかにした。また、分子カプセルは、中性分子を内包しないことから、カチオン性空間の特性を生かした分子認識が可能であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果として、カチオン性カプセルの構築とアニオン性のトリフルオロボレート類の内包が挙げられる。アクリジニウム骨格を有する新規なビスピリジン配位子を3段階の反応で合成した。それと金属イオンの錯形成によりカチオン性カプセル錯体の定量的な合成に成功した。その構造は、各種NMRスペクトルおよびX線結晶構造解析により明らかにした。また、カチオン性のカプセル錯体を用いて、水中で有機アニオンのトリフルトロボレート類の内包も達成した。これらのカチオン性カプセルに関する成果は、学会発表を通じて公表していることから、進度は、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、トリフルオロボレート類のスクリーニングを行い、カチオン性カプセルの分子認識能を明らかにする。つぎに、トリフルオロボレート類以外の無機・有機アニオンの内包を検討する。これにより、カチオン構造体のアニオン内包能を明らかにする。また、アクリジニウム骨格を有するカチオン性チューブやケージを合成し、多様な形状のカチオン性空間を構築する。最後に、ゲスト分子を内包したカプセルに光を照射し、光反応が進行するか明らかにする。
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Research Products
(5 results)