2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J10886
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山岸 慎平 東京工業大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 聴覚情景分析 / 音脈分凝 / 聴性脳幹反応 / 中潜時反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
特徴量の異なる2つの音(A音、B音)と無音(-)を組み合わせた音列(ABA-音列)を聴取した際、捉え方の異なる2つの知覚状態が生じうることが知られている。このABA-音列の知覚は、音列の物理特性に依存する。しかし、物理特性が一定であっても、音列を繰り返し呈示すると、聴取者の知覚が2つの解釈の間で切り替わることが知られている。この知覚交替現象は、曖昧な聴覚入力に対する解釈を探る脳内の処理を反映するものであると考えられる。これまで、音脈知覚の神経基盤の理解を目指し、脳の誘発電位を用いた研究を進めてきた。その結果、聴性脳幹反応(Frequency following response: FFR)と視床・聴覚野レベルの反応(Middle latency response:MLR)が音脈の知覚状態と相関することがわかった。本年度の研究では、知覚交替に伴った脳幹の神経活動の変化より、上位の活動(MLR)の変化の方が先に生じていることが確認された。これは音脈形成の処理機構に上位から脳幹へのフィードバック投射が含まれていることを示唆する。ここまでの結果をまとめ、国際誌に投稿し、現在査読(minor revision)を受け内容を修正中である。 また、これまでは周波数情報(A音とB音の間の周波数差)を手掛かりとした音脈知覚について調べてきた。しかし、音脈分凝は周波数手掛かりを含まない場合も起こることが知られている。そこで、時間情報(振幅変調の違い)を手掛かりとした場合について音脈の知覚交替特性を調べた。その結果、時間情報を手掛かりとした場合、周波数手掛かりと比べて、知覚交替の回数が少ないことがわかった。この結果については現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上位の神経活動と脳幹レベルの神経活動の相互関係を見出すことができ、申請書に記載した計画を進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、音脈知覚の脳内処理メカニズムの理解に向けて、以下の観点から研究を行う。ひとつは、聴覚系の階層的構造の重要性である。これまでの研究で脳幹へのフィードバック投射が示唆されたが、より厳密に脳内処理ネットワークを調べるには、新たな技術が必要である。特に多チャンネルEEGやMEGによる信号源分離に着目している。もうひとつは、周波数情報以外の手掛かりに基づく音脈知覚である。異なる特徴次元に基づく音脈の知覚は、異なるメカニズムを反映している可能性が考えられ、さらなる実験を進めることでメカニズムの理解につながると考えられる。
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Research Products
(4 results)