2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J11079
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鬼頭 孝佳 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 女訓 / 女性史 / 漢字文化圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(1)女訓の考察、(2)女訓的内容を持った説話を活用した授業報告、(3)女訓分析に有用な理論分析を行った。(1)では吉田松陰、中村正直、若江薫子の女訓について調査を行った。吉田松陰の女訓については儒学のみならず、伝統兵学や洋学の影響が看取される。中村正直については儒学をベースとしつつも、洋学の基礎の上に立った女性観が看取される。若江薫子について当人の伝記的資料が少なく、今後も現地調査を続けて継続するが、女四書注釈の比較によって、少なくとも他の女四書の注釈には見られない独自性を有することが確認できた。これらの成果については近日中に発表予定である。 (2)では蒙求『郭巨』説話が東アジアでどのような変遷を遂げ、近代人にどのように受容されたのかを追跡している。この説話についてゲストスピーカーとして大学生に伝える機会があり、その実践を全国漢文教育学会で報告し、『新しい漢文教育』に掲載予定である。(3)では広く東洋の女訓イメージがいびつな形で反映されているエコフェミニズムについてその科学観や社会観、女性と自然の結びつきに関する言説資源としての東洋の女訓の活用について検討した。その成果の一端は日本女性学会で報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた女訓に加え、関連する説話文学に研究対象を広げる必要が生じてきているためである。また、伝統兵学や洋学関連資料についても当初の予定通りに精読ができているとは言い難い。この2つの課題をクリアすることによって、当初想定した比較軸について、儒学に限定されないより広い文脈で位置づけることが可能になり、当初の想定以上の研究成果が得られると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、近世の女訓そのものに加えて、近世の女訓の周辺資料の文脈、更にはその女訓が近代にどのように解釈されていったのかを解明することを通じて、女訓の内在的理解と近代の視点からの外在的理解の乖離を浮き彫りにすることができると考えている。また、女訓の表象を現実と突き合わせることで、女訓が現実の形成にどのように寄与してきたのかを明らかにすることができると考えている。こうした視点から女訓が研究対象になってきたとは言い難く、そのためにより精緻な関連資料の調査・精読が必要となると考えている。
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