2015 Fiscal Year Annual Research Report
既達成の目標によるセルフ・ライセンシングの生起メカニズムの検証
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15J11109
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
櫻井 良祐 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 自己制御 / セルフ・ライセンシング / 制御資源 / 自我枯渇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は 「既達成の目標を想起すると、セルフ・ライセンシング(自己制御を発揮した後、別の自己制御の不全を正当化し、その遂行が低下すること)が生起するか」を検証することであった。とりわけ、人は基本的に自己制御を発揮すべきだと考えていることを踏まえ、自己制御を発揮する心的資源が不足したとき(自我枯渇)にのみ上記の効果がみられるという予測のもと、2つの実験をおこなった。 1つ目の実験では、自我枯渇操作の後、既達成の目標を想起させ、後続の自己制御課題の遂行が変化するかを検証した。この実験では自我枯渇操作としてストループ課題を用いた。具体的には、自我枯渇させる条件では文字の色と意味が不一致な文字(e.g., 赤色の「青」)のみを呈示し、自我枯渇させない条件では文字の色と意味が一致した文字(e.g., 赤色の「赤」)のみを呈示し、文字の色を回答するよう求めた。しかし、自我枯渇操作は十分におこなわれず、後続の自己制御課題の遂行についても仮説を支持する結果は得られなかった。 そこで2つ目の実験では、社会的排斥が自我枯渇を引き起こすという先行研究に基づき、自我枯渇操作としてサイバーボール課題を用いた社会的排斥の操作をおこなった。サイバーボール課題とは参加者を含めた3名のプレイヤーでボール回しをおこなう課題であり、自我枯渇させる条件では参加者にボールが一切回ってこず、自我枯渇させない条件ではボールが全てのプレイヤーに等確率で回ってくるよう設定した。結果、自我枯渇操作は十分におこなわれ、後続の自己制御課題の遂行も仮説を概ね支持するパターンを示した。具体的には、既達成の目標を想起した参加者は、社会的排斥を受けると後続の自己制御課題の遂行が低下したことが明らかになった。ただし、その効果は自己制御の不全に対する罪悪感が高い参加者にのみ確認された。この知見は、日本社会心理学会第56回大会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はこれまでに自我枯渇時におけるセルフ・ライセンシングについて実証的な検討をおこない、仮説を概ね支持するを得ている。全体として本研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は罪悪感などの個人差や自己制御の不全を正当化する心的プロセスを含めた、より精緻な理論モデルを提出することを目指している。
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