2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J11136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀之内 裕理 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 強相関ボソン系 / 冷却原子気体 / くりこみ群 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究目的(ⅰ)「少数多体系の普遍的性質とリミットサイクルのトポロジカルな性質の対応を明らかにする」は完全に達成した。すなわち、強相関ボソンが成す普遍的物理であるEfimov効果において、3体束縛状態1つに対して必ず4体束縛状態が2つ付随するという物理の背後に、くりこみ群のリミットサイクルが理論空間に巻き付くというトポロジーが隠れていることを明らかにした:くりこみ群の周期的な流れ(閉じたループ)であるリミットサイクルは、Efimov効果の普遍性を表すが、そのリミットサイクルが理論空間において3体結合定数方向に1回巻き付く間に、4体結合定数方向には2回巻き付くことを発見した。この巻きつき数は、3体束縛状態1つに対して必ず4体束縛状態が2つ付随するという普遍的物理を反映しており、少数多体系の普遍的物理は、リミットサイクルのトポロジーに起源を有するということを示している。 本研究は、少数粒子系におけるくりこみ群のトポロジーという全く新たな概念を導入したと共に、本来5次元以上の偏微分方程式系を解く必要のあった5,6,7粒子系の物理に対して、「くりこみ群の幾何学的性質から逆に普遍的物理の内容を予言する」という新たなアプローチの可能性を提示した。 次に、平成27年度の研究目的(ⅱ)「Efimov効果の多体系への影響を明らかにする」に関しては、「多体系を直接調べる前に、少数系の理解が必要不可欠である」と考えたため、本来の研究目的(ⅱ)とは異なる研究目的(ⅰ)の拡張に取り組んだ。すなわち、研究目的(ⅰ)でくりこみ群のトポロジーを明らかにしたため、同種ボソン以外のEfimov効果を考えることにより、束縛状態の数が質的に変わるという現象が、新奇のトポロジカル相転移であるという提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究目的(ⅰ)「少数多体系の普遍的性質とリミットサイクルのトポロジカルな性質の対応を明らかにする」と研究目的(ⅱ)「Efimov効果の多体系への影響を明らかにする」の内容を達成するという2つの目標のうち、目的(ⅰ)は達成し、目的(ⅱ)は下記の理由から別の研究目的に切り替えて研究を行い、大きな成果を得た。 平成27年度は研究目的(ⅰ)を完全に達成し、論文を投稿した。同時に、研究目的(ⅰ)から得た新たな着想の元、「少数粒子系におけるくりこみ群のトポロジカル量子現象」という誰も予想しなかった新たな分野の開拓に着手した。具体的には、質量の異なる3,4粒子系に対して、質的に異なる束縛状態構造が、トポロジカル相であるという提案を行った。これらの研究に関して、3回招待講演を行った。 研究目的(ⅱ)も重要な目的であるが、多体系の物理を調べる前に、少数系の物理を理解することが不可欠であるという考えに至ったため、「くりこみ群のトポロジー」に着目するという独自の視点に基づき、研究目的(ⅱ)の代わりに、上記の「くりこみ群のトポロジカル量子現象」というテーマに取り組んだ。この新たな研究テーマは、新分野の開拓という意味で、本来の研究目的(ⅱ)に比べても大きな仕事である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、既に達成した研究目的(ⅰ)「少数多体系の普遍的性質とリミットサイクルのトポロジカルな性質の対応を明らかにする」の拡張である、同種ボソン以外のEfimov効果における「くりこみ群のトポロジカル量子現象」の研究、及び本来の研究目的である研究目的(ⅱ)「Efimov効果の多体系への影響を明らかにする」に対して、「5,6,7…粒子の普遍的物理を、リミットサイクルの幾何学的性質から予言する」という方法によって、多体系の物理にアプローチする。 具体的な研究方策としては、研究目的(ⅰ)を達成する際に私が確立した手法として、汎関数くりこみ群とユニタリー極近似法という2つの手法の組み合わせを用いる。この手法によって本来5次元以上の偏微分方程式系を解く必要のあった4,5,6,7粒子の問題に対して、実質的に2体問題を解くという非常に低い計算コストで計算が行える。 これら2つの研究は、全く新しい分野(少数粒子系の普遍的物理とトポロジカル現象)の開拓を行うと共に、及び強相関ボソンの普遍的物理に対するマイルストーンとなるような研究であるため、研究計画にある平成28年度の研究目的(ⅲ)「相互作用クエンチによるユニタリーボース気体の普遍的性質や新奇的ダイナミクスを発見する」に比べても重要な研究であると考えられる。 研究計画の変更によって、現在まで用いてきた研究手法が大部分応用できるという点において、手法開発の必要であった元の研究目的(ⅲ)よりも、スムーズに研究が進められると期待される。
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