2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J11146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮田 智衆 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 液体 / STEM / ELNES / 単原子観察 / ナノ不均一構造 / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体はバルク中や異相界面において微細構造を形成し、これが液体の反応・輸送効率に大きく影響を与えることが知られているが、これまで直接観察はほとんど行われておらず詳細な構造やメカニズムは明瞭になっていない。近年、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査TEM(STEM)により液中の微細領域観察が行われているが、厚い封止膜を使用するために分解能が低下し、液体中の原子や液体構造の観察を行うことは困難であった。本研究では、真空中で蒸発しないイオン液体を使用することで、固体膜を使用せず宙空に薄い液体膜を作製し高分解能での観察を実現した。この試料を使用して、昨年度は以下の3テーマについて研究し成果を発表した。 1, 重元素が明るく観察される高角度環状暗視野STEM法を使用して、金のイオンを分散させたイオン液体の観察を行った。いくつかのイオン液体中において金の単原子を明瞭に観察することに成功した。さらに、単原子の挙動を追跡することで、拡散係数の見積もりにも成功した。これまで液体中の単原子を直接観察した前例はなく、これは液体中でのイオンの輸送機構や化学反応の直接観察につながる成果である。 2, 極性液体中では、液体分子の極性部位と非極性部位がナノスケールで相分離して、ナノ極性/非極性ドメイン構造を形成していることが知られている。本研究では、イオンが極性領域に存在しやすいことに着目し、金の分布を解析することで、極性・非極性ドメインの2次元分布の可視化を行った。このドメイン間距離はX線回折の相関長と良い一致を示しているため、観察に成功していると考えられる。 3, イオン液体から測定したELNESスペクトルを第一原理ELNES計算により再現し、各ピークを液体分子の各部位に帰属することに成功した。さらに構造を変化させて比較することにより、液体中での分子の配位状態をELNES測定により解析できる可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の根幹である、A.液体中の単原子観察、B.計算による液体ELNESスペクトルの再現を共に達成し、さらに異相界面における拡散挙動解析や液体中でのナノ微細構造解析等の2・3年次計画を達成するための予備研究も滞りなく進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は次の3テーマに取り組み、液体微細構造や拡散・反応の微視的メカニズムの解明と、それらの解析手法の確立を目指す。 1, 昨年度の研究を引き継ぎ、HAADF-STEMおよびSTEM-ELNESを用いた液体中のナノドメイン構造および化学結合・配位状態分布解析 2, 拡散係数の液体膜厚依存性、さらに気液・固液界面からの距離依存性の測定 3, 2年次計画として挙げた、液体バルク中および異相界面における化学反応の直接観測
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