2015 Fiscal Year Annual Research Report
キラルリチウムホスホリルフェノキシド触媒を用いる光学活性アルコールの合成法の開発
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15J11223
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山川 勝也 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | リチウム / シアノ化反応 / シアノヒドリン / シリカート / スケールアップ |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では、これまでにカルボニル化合物のエナンチオ選択的シアノシリル化反応に有効な2つの酸・塩基複合型触媒の開発を行った。平成27年度の研究計画として、ケトンのエナンチオ選択的シアノシリル化反応に有効な新規Lewis酸・Lewis塩基複合型キラルリチウムホスホリルフェノキシド触媒の開発及びその反応機構の解明を挙げていた。従来の触媒では基質適応範囲及びスケールアップの難しさという問題があったが、本キラルリチウムホスホリルフェノキシド触媒は幅広いケトンのエナンチオ選択的シアノシリル化反応に有効で、従来の触媒システム(1日以上)よりも非常に短時間(9時間)で最高99%収率、98% eeで目的のシアノ化生成物を得た。さらに、本触媒システムを用いてスペルミジンアルカロイドの合成へと展開した。本触媒反応で得られた生成物に対して4ステップの化学変換を行い、(+)-13-hydroxyisocyclocelabenzineの合成鍵中間体を光学的に純粋に合成することに成功した。また、反応機構の詳細な検討を行った。非線形効果やESI-MS分析、コントロール実験を行うことで、水を添加することで生成したモノマー錯体が触媒活性種だと示唆された。さらに、NMR実験とESI-MSを用いた分析により、リチウム錯体に5配位シリカートが配位した錯体が観測された。従って、これまでは反応性が高すぎて不斉反応への適用が困難であった5配位シリカートが反応活性種であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケトンのエナンチオ選択的シアノシリル化反応に有効な本キラルリチウムホスホリルフェノキシド触媒は幅広いケトンに有効で、非常に短時間(9時間)で最高99%収率、98% eeで目的のシアノ化生成物が得られ、さらに30グラムスケールでの適用も可能であった。本研究成果は国際ジャーナル(Angewandte Chemie International Edition 2016, 55, 4021ー4025、Synfacts, 2016, 12, 395にもハイライトされる。)に掲載され、さらに、高い評価を頂き、Cover Pictureに採用された。また、化学工業日報や中日新聞に本研究成果が掲載された。 第46回中部化学関係学協会支部連合秋季大会 特別討論会で本成果を発表し、VIP賞を受賞した。 現在、本触媒を用いた不飽和アミドの不斉共役シアノ化反応においても最高92% eeを発現しており、今後の研究も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ケトンのエナンチオ選択的シアノシリル化反応に有効な本キラルリチウムホスホリルフェノキシド触媒を不飽和アミドの不斉共役シアノ化反応への適用を行った。不斉共役シアノ化反応で得られるβーシアノアミド生成物は様々な化学変換が可能で、非常に有用な光学活性物質である。検討の結果、N-ピロールアミドに有効で、最高99%収率、93%eeで目的生成物を得た。今後は、さらに挑戦的な研究として、α,β,γ,δ-不飽和アミドの1,6付加選択的な不斉共役シアノ化反応の開発を行う。
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Research Products
(6 results)