2015 Fiscal Year Annual Research Report
X線観測で明らかにする磁気駆動型の中性子星の統一的描像
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15J11241
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 浩章 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | マグネター / 中性子星 / 自由歳差運動 / トロイダル磁場 / すざく / ASTRO-H |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の2つのアプローチにより研究を遂行した。 (1) X線衛星「すざく」で2011年に取得された、マグネター 4U 0142+61のデータを解析し、硬X線パルスが周期15時間で振幅1.0秒の位相変調を受けていることを明らかにした。同天体ではすでに2009年および2013年において同じ15時間でのパルス位相変調が発見されている。これらの現象は、10の16乗ガウスに達するような非常に強い内部トロイダル磁場によってレモン型に変形した中性子星が自由歳差運動を起こし、そこに硬X線放射の非軸対称性が重なったため、自転と歳差の「うなり」にあたる周期でパルス位相の進み遅れが起きたものと考えられる。また、2007年から2013年にかけて、位相変調の振幅が0秒から1.3秒まで徐々に増加していることから、自由歳差運動の首振り角は一定に保たれたまま、硬X線放射の方向が極から赤道へ移動したという興味深い描像が得られている。これらの結果について、国際学会や理化学研究所のシンポジウムで発表を行った。また、このような現象を他天体でも検出するべく、マグネター1E 1841-045および1RXS J170849.0-400910の『すざく』データを解析し、1例目ほど顕著でないものの、約10の16乗ガウスのトロイダル磁場による磁気変形を示唆する結果を得た。 (2) マグネターの硬X線成分をより高い感度で捉えるべく、X線衛星ASTRO-H(「ひとみ」)搭載硬X線イメージャの開発に携わった。打ち上げ前に行われた衛星全体の環境試験・衛星総合試験に全面的に参加し、測定データの解析を主導した。また2016年2月の打ち上げ後には、硬X線イメージャの立ち上げ運用に参加し、軌道上での機能検証・性能評価を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「すざく」衛星のデータ解析は順調に展開し、共著で論文を投稿した1E 1547.0-5408も含めると、新たに3天体から自由歳差運動の兆候を示唆する結果が得られている。ASTRO-H(「ひとみ」)衛星の開発も計画通り進み、特に硬X線イメージャは打ち上げ前の衛星総合試験において良好な性能を示した。「ひとみ」は2016年2月にH-IIAロケット30号機により無事に打ち上げられた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「すざく」アーカイブデータを用いて、残るマグネターについても同様の自由歳差運動の兆候を探査する。また同時に、自由歳差運動する中性子星からの放射を数値的にモデリングし、放射領域とビームの方向・形状をパラメータとしてシミュレーションを行う。この結果を実際に観測されたパルス形状と比較し、放射パターンを絞り込みたい。 (2)「ひとみ」衛星は、2016年3月26日以降、通信異常により正常な観測が行えなくなっている。このため、復旧に向けて全力で取り組むとともに、異常以前に軌道上で取得されたデータの解析を徹底して行う。
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Research Products
(3 results)