2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J11287
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 陽平 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 発光 / ラジカル / 二重項 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで発光性ラジカルは光照射化等の環境で不安定と考えられてきたが、これまでの研究でその安定性を大きく向上させることに成功した。ラジカルの発光は二重項励起状態から二重項基底状態への蛍光というユニークな性質を持ち、スピンを活かした発光材料や高効率ELデバイスへの応用が考えられる。今年度は安定発光ラジカルの基本骨格に修飾を加えることで、安定性の向上や発光効率の改善にどのような要因が寄与するのかを見出すことを目的に研究を行った。 安定発光ラジカルPyBTMの安定性や軌道準位にはラジカル中心のメチル基の周囲の6つの塩素原子が大きな役割を果たしており、これらを変更することで安定性や発光効率に影響が出ると予想される。申請者はそれらのうちピリジン環上の塩素原子に注目し、ピリジン環上の塩素原子をフッ素原子に替えたF2PyBTMラジカル及び臭素原子に替えたBr2PyBTMラジカル合成した。吸収及び発光の波長はF2PyBTM < PyBTM < Br2PyBTMの順に長波長シフトした。この変化は分子軌道のエネルギーを量子化学計算することで説明することができた。F2PyBTMはジクロロメタン中で4%とPyBTMより強い蛍光を示し、Br2PyBTMは370 nmの紫外光照射化でPyBTMよりも高い安定性を示した。F2PyBTMでの蛍光量子収率の増加はフッ素原子の持つ強い電子求引性及び発光の短波長シフトと関連付けられ、Br2PyBTMでの光安定性の増加は臭素原子の立体効果あるいは発光の長波長シフトに起因すると考えられた。 以上のように合成及び計算により、安定発光ラジカルの基本骨格に関する理解が進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な設計は当初の電荷移動型の方向性とは異なるものの、発光量子収率を向上させて安定発光ラジカルの発光物質としての有用性を示すという当研究の最終的な目標に向けて進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に見出された錯体化による安定発光ラジカルの光安定性及び発光効率の向上と、今年度得られた安定発光ラジカルの基本骨格に関する理解・特にフッ素原子の導入による量子収率の向上を合わせることで、これまで以上の安定発光ラジカルの発光効率を達成することを狙い、研究を進めていく。
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