2015 Fiscal Year Annual Research Report
すばる望遠鏡FMOSによる大規模銀河分光サーベイで探る宇宙の加速膨張の起源
Project/Area Number |
15J11301
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
舎川 元成 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 観測的宇宙論 / 赤方偏移空間歪み |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、すばる望遠鏡FMOSによる銀河分光サーベイ(FastSoundプロジェクト)の観測データから、赤方偏移カタログを作成し、その成果を論文として発表した。この論文では、FastSoundプロジェクトの基礎デザイン、データ取得、第一段階解析、データの公開など、サーベイの基礎的かつ不可欠な部分について詳しくまとめた。この解析の段階で開発し、データ解析において重要な役割を果たした、「輝線自動検出ソフト」についても、そのアルゴリズムや性能評価をまとめた論文が受理された。 この赤方偏移カタログは、2012年4月から2014年7月の35晩のすばる望遠鏡FMOSによる観測で得られた、赤方偏移1.2~1.6に位置する約5,000の銀河の位置や輝線の情報について詳細にまとめたもので、赤方偏移1を超えるものとしては、世界で初めてのデータである。 このデータを用いて、FastSoundプロジェクトの第一目標である、銀河の二点相関関数に見られる非等方性である赤方偏移空間歪みの検出による宇宙の大規模構造の成長率測定が、赤方偏移1を超える領域で、初めて4σの有意性で行われた。現在標準的に用いられている宇宙モデルであるΛ-CDMモデルの予測と無矛盾な結果が得られ、同時に、今後のより大規模なサーベイで行われる大規模構造の成長率測定が、宇宙の加速膨張の起源の可能性である修正重力理論の制限に有用であることが分かった。 FastSoundのデータは2016年1月に公開され、現在は誰にでも使用可能な状態である(http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/Fastsound/index-j.html)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、当初の予定通り、FastSoundプロジェクトの第一論文を筆頭著者として出版した。 また、FastSoundデータのカタログ化も完了し、データリリースを行うこともできた。 このデータを用いて、銀河クラスタリングの解析、赤方偏移空間歪み効果の検出に基づく大規模構造の形成スピード測定、修正重力への示唆も当初の予定通り進行し、共著論文として出版した。 これらの結果についての発表も、国際会議と国内会議で1回ずつの口頭発表を行っており、これも予定通りである。 以上の点から、本研究は予定通り進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
FastSoundデータ(赤方偏移1.4の星形成銀河のカタログ)を用いたサイエンスとしては、現在FastSound銀河のintrinsic alignment(IA)の測定を行っている。これは銀河が大規模構造の中で、特定の方向を向きやすいかを表す量で、銀河形成の物理に大きく関わるものである。「銀河の形状はアンサンブル平均では真円である」ことを仮定する弱重力レンズサーベイにおける系統誤差の原因ともなりうる量であるため、IAの測定を、これまでにない赤方偏移でFastSoundデータを用いて行う意義は大きいと考えられる。
また、FastSoundの銀河クラスタリング解析に携わった経験を活かし、他の測光や分光サーベイのデータを使った銀河クラスタリングによる宇宙論研究、例えばバリオン音響振動の検出による宇宙論パラメータの制限などを並行して行う予定である。
|
Research Products
(7 results)
-
[Journal Article] The Subaru FMOS galaxy redshift survey (FastSound). IV. New constraint on gravity theory from redshift space distortions at z~1.42016
Author(s)
T. Okumura, C. Hikage, T. Totani, M. Tonegawa, H. Okada, K. Glazebrook, C. Blake, P. G. Ferreira, S. More, A. Taruya, S. Tsujikawa, M. Akiyama, G. Dalton, T. Goto, T. Ishikawa, F. Iwamuro, T. Matsubara, T. Nishimichi, K. Ohta, I. Shimizu, R. Takahashi, N. Takato, N. Tamura, K. Yabe, N. Yoshida
-
Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] The Subaru FMOS Galaxy Redshift Survey (FastSound). III. The mass-metallicity relation and the fundamental metallicity relation at z~1.42016
Author(s)
K. Yabe, K. Ohta, M. Akiyama, A. J. Bunker, G. Dalton, R. Ellis, K. Glazebrook, T. Goto, M. Imanishi, F. Iwamuro, H. Okada, I. Shimizu, N. Takato, N. Tamura, M. Tonegawa, T. Totani
-
Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] The Subaru FMOS Galaxy Redshift Survey (FastSound). I. Overview of the Survey Targeting on Ha Emitters at z~1.42015
Author(s)
M. Tonegawa, T. Totani, H. Okada, M. Akiyama, G. Dalton, K. Glazebrook, F. Iwamuro, T. Maihara, K. Ohta, I. Shimizu, N. Takato, N. Tamura, K. Yabe, A. J. Bunker, J. Coupon, P. G. Ferreira, C. S. Frenk, T. Goto, C. Hikage, T. Ishikawa, T. Matsubara, S. More, T. Okumura, W. J. Percival. L. R. Spitler, I. Szapudi
-
Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 67
Pages: 81
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-