2015 Fiscal Year Annual Research Report
有機ラジカルを配位子とするランタノイド錯体を用いた磁性材料の研究
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15J11497
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
金友 拓哉 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 4f-2pヘテロスピン系錯体 / 交換相互作用 / 構造磁性相関 / ランタノイド / 有機ラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ランタノイド (Ln) イオンに有機ラジカル (rad) を組み込み、多様な構造や物性を示す物質 (4f-2pヘテロスピン系錯体) の開発を目的とする。我々はLnイオンと有機ラジカル間に働く交換相互作用に着目した。この相互作用はスピンの配列を制御するファクターの1つであり、バルク磁石 (永久磁石など) や分子性磁性体 (単分子磁石など) において重要とされる。これまでの研究より、局所的な分子構造から交換相互作用を制御する設計指針を当グループは得ている。この設計指針より、スピンを反平行に配列する磁気的相互作用(AF)を戦略的に得ることに成功した。今回、スピンを同一方向に配列する磁気的相互作用 (FO) の開発を目指した。この相互作用の獲得は1分子におけるスピン密度を最も高い状態にするため、記憶材料などで求められている。先述の分子設計より、Ln-rad間に”ねじれ”を導入することを検討した。具体的には、有機ラジカルにLnイオン及び周囲の配位子と立体反発を引き起こす置換基を導入した。それに伴い大きな”ねじれ”を導入することができた。実際に得られた錯体はLn-rad間に大きなねじれが見られた。磁気測定より強磁性的相互作用を確認することができた。その相互作用の大きさはこれまで報告されてきたLn-ニトロキシド化合物のなかで最大であった。以上の結果より、4f-2pヘテロスピン系における構造磁性相関はFO/AFに共通して適用できることを示した。また、Ln-ニトロキシド化合物において、FO/AFを示す系の双方の世界記録を塗り替えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的は、4f-2pヘテロスピン系錯体において戦略的にスピンを平行に揃える相互作用を得ることであった。これについて、筆者らが提案する構造磁性相関に基づき、分子設計・合成を行った。結晶構造解析及び磁気測定より、筆者らの計画した通りの材料が開発できたことがわかった。確認された相互作用は現在知られているランタノイド-ニトロキシド錯体のなかで最も強かった。以上のことから、目的に対して十分な結果を得たと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
4f-2pヘテロスピン系錯体において、ランタノイドイオンとラジカル間の相互作用の大きさや配列を制御することが可能になった。今後は、スピンの配列を制御する局所的な分子設計に加えて、次元性及び磁気異方性の制御を目的とする。有機ラジカルの化学的修飾により、1次元鎖や2次元シートなど次元性の制御を試みる。
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Research Products
(7 results)