Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,血管機能低下の早期発見を目指して,血管機能の低下に部位差があるかどうかを検討することを目的としている.本年度は,脳血管および眼底血管におけるCO2反応性の加齢の影響の違いを検討するため,以下のような実験を行った. 身体特性の似通った若年者14名,中高年者11名の計25名に5%CO2ガスを吸入させ,その際の網膜動脈(RA),脈絡膜血管(RCV),その両方を含む視神経乳頭部の血管(ONH),および中大脳動脈(MCA)における,呼気中CO2分圧(PETCO2)1mmHg変化あたりの血流速度の相対変化率を求めた(%/mmHg). MCAのCO2反応性は,すべての眼底血管のそれよりも,両群ともに有意に高い値を示した.各部位のCO2反応性を2群間で比較したところ,RAおよびONHでのみ差が認められ,CO2反応性と年齢との間に有意な負の相関が認められたのもRAおよびONHのみだった.これらのことから,脳血管と眼底血管,さらに,眼底の網膜動脈と脈絡膜血管では,CO2反応性に及ぼす加齢の影響に差があるということが示唆された. しかし,CO2反応性に及ぼす加齢の影響が部位によって異なる機序は不明である.血管の柔軟性や拡張,収縮能は加齢に伴い低下する.加齢に伴う血管の器質的変化が機能的変化に影響しているかどうかを検討するため,眼底血管の器質的血管機能評価に用いられるblowout time(BOT)とCO2反応性との関連を検討した.BOTは柔軟性や弾力性を主に反映する指標であり,年齢と負の相関がある.すると,CO2反応性と同様,RA,RCV,およびONHのBOTは加齢に伴い低下したが,MCAのBOTは若年群,中高年群間で変わらなかった.また,CO2反応性とBOTとの間に相関関係は認められなかった.すなわち,加齢に伴う器質的変化と機能的変化は独立していることが示唆された.
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