2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J11596
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
高澤 建 宮崎大学, 医学獣医学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / ヒトiPS / TERT |
Outline of Annual Research Achievements |
TERT-DMRにおける統合的なエピジェネティック状態を①ヒストン修飾解析②ゲルシフトアッセイ・メチル化ゲルシフトアッセイを通して明らかにした。 ①活性型ヒストン修飾であるH3K4me3は、TERT遺伝子を発現しているヒトiPS細胞の転写開始点近傍において豊富に認められた。一方、TERT遺伝子を発現していないヒト体細胞では認められなかった。また、抑制型ヒストン修飾であるH3K27me3は、TERT遺伝子を発現していないヒト体細胞においてTERT-DMRを含む広範なプロモーター領域で豊富に認められたが、ヒトiPSでは認められなかった。一般的に遺伝子発現活性とDNAメチル化状態、ヒストン修飾状態およびクロマチン構造の関係は、低発現活性・DNA高メチル化・H3K27me3修飾・ヘテロクロマチン状態であり、高発現活性・DNA低メチル化・H3K4me3修飾・ユークロマチン状態であることが知られている。本結果から、TERT遺伝子は一般的な遺伝子発現活性とエピジェネティック状態との関係とは異なり、高発現活性・DNA高メチル化・H3K4me3修飾であり、低発現活性・DNA低メチル化・H3K27me3修飾であることが示された。 ②メチル化TERT-DMRを用いたメチル化ゲルシフトアッセイ系を確立し、非メチル化TERT-DMRと結合蛋白質の差異について解析した。メチル化・非メチル化TERT-DMRともに、iPS細胞核抽出物とのシフトバンドを認めた。このことから、iPS細胞においてTERT-DMRのメチル化状態の有無に関係なく結合するタンパク質の存在が示唆された。一方、体細胞核抽出物ではメチル化・非メチル化TERT-DMRともにTERT-DMRにiPS細胞に比べて非常に弱いシフトバンドが観察された。以上のことから、TERT-DMRのメチル化状態依存性の遺伝子発現制御は核タンパク質のTERT-DMRメチル化状態に応じた結合能変化によるものではないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究においてTERT遺伝子におけるDNAメチル化とヒストン修飾の関係性は、これまで知られているものとは異なる結果となり、新たなエピジェネティクス制御の存在が示唆された。さらにメチル化または非メチル化TERT-DMRに特異的に結合する蛋白質が存在しないことからTERT-DMRのメチル化を介した発現制御はDNAメチル化状態に応答した転写因子結合能の変化によるものではなく、染色体高次構造変化を伴うような核内環境を含めた広域におよぶ制御機構であることが推測された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果からTERT-DMRのDNAメチル化状態に応答した染色体高次構造などの核内環境の変化を伴う、より広域な制御機構であることが推測されたことから、今後はChromosome Conformation Capture (3C) 法などを用いてTERT-DMRを介した染色体高次構造の解析を進めていく予定である。また、TERT遺伝子発現獲得時におけるTERT-DMRメチル化状態の変化を明らかにするために、ドキシサイクリン誘導性リプログラミング因子発現ヒトiPS細胞を用いて、リプログラミング時における経時的TERT-DMRエピジェネティック解析を行う。
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