2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞小器官レベルの鉄代謝機構解明を目指す二価鉄イオン蛍光プローブの開発
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15J11637
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
丹羽 正人 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 蛍光プローブ / イメージング / 鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、鉄(II)イオン選択的OFF-ONスイッチングシステムであるN-オキシドの化学を基盤とし、(1)細胞膜、(2)小胞体、および(3)細胞質に局在するプローブの開発を実施した。 (1)細胞膜局在型:細胞膜局在型鉄(II)イオンプローブは、8段階でその合成を達成し、種々のスペクトル測定により鉄(II)イオン選択的な発蛍光応答を示すことを確認した。生細胞イメージングへと応用したところ、設計通りに本プローブが細胞膜上に局在することが見出された。さらに、本プローブを用いて、トランスフェリンエンドサイトーシスの過程で放出される鉄(II)イオンの可視化にも成功した。以上の結果から、今回開発した細胞膜局在型鉄(II)イオンプローブは、細胞膜における鉄が関与する事象を解析する上で有用な検出ツールとなると考えられる。 (2)小胞体局在型プローブ:鉄(II)イオンに対する応答性を向上させるためのプローブの構造展開を実施した結果、高い検出感度と反応速度を示し、また、小胞体への局在性を有するプローブの開発に成功した。生細胞における機能を評価したところ、本プローブは当研究室で開発した既存の鉄(II)イオン蛍光プローブでは検出困難な、極低濃度領域における細胞内在性二価鉄イオンの増減を検出することが可能であった。 (3)細胞質局在型プローブ:まず、細胞質拡散性を期待して4種類のローダミンを蛍光団とするプローブの設計・合成を行ったところ、いずれもゴルジ体やミトコンドリア等、他の細胞内小器官への局在を示した。続いて、ロドールを蛍光団として細胞質拡散型プローブを分子設計し、全8種のプローブの合成と評価を実施した。その結果、1種の誘導体が試験管内において鉄(II)イオンに対する発蛍光応答を示し、さらに生細胞イメージングに関する種々の検討において、細胞質全体に拡散・滞留することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細胞質局在型プローブについては局在性と鉄応答性に関して、さらなる構造最適化が必要であるが、現段階においても十分に有用なプローブが得られた。小胞体への局在性を有するプローブは当初の計画に記載していなかったが、プローブの鉄応答性を向上させるための構造展開研究を行なう過程で小胞体への局在性を持ち、さらに鉄応答性に優れているプローブを見出した。また、細胞膜局在型プローブについては、現在、良好な膜局在性および鉄応答性を示すプローブを得た。また、これらの機能性プローブを用いて細胞内鉄動態に関する種々の解析研究も進めている。以上の成果を統合的に判断して、研究計画は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞質局在型プローブのさらなる構造最適化を実施すると同時に、核局在型プローブ等、他の細胞小器官を標的とした鉄(II)イオン蛍光プローブ群の開発を実施する予定である。さらに、初年度において得られた細胞膜局在型プローブと小胞体局在型プローブを用いて、詳細な蛍光イメージングによる細胞内の鉄動態解析研究を展開する予定である。
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