2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J11660
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
岡本 彩香 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | Drug Delivery System / miRNA / siRNA / Liposome / Lipid nanoparticle |
Outline of Annual Research Achievements |
microRNA-499(miR-499)は、血管新生や細胞増殖を促進する重要なシグナル経路であるWnt経路やカルシニューリン経路を標的とするmicroRNAである。近年、血管新生阻害薬により腫瘍の無秩序な血管構造が正常化され、抗がん剤の腫瘍送達効率が向上することが報告されていることから、本研究では、miR-499の持つ血管新生抑制作用に着目し、miR-499による血管正常化を期待して、Doxorubicin(DOX)との併用療法を検討した。miR-499の送達ベクターとしては当研究室が開発したtetraethylenepentamine-based polycation liposomes(TEPA-PCL)を用いた。さらに、腫瘍血管内皮細胞および種々のがん細胞に高発現している血管内皮増殖因子受容体-1に親和性を有するAla-Pro-Arg-Pro-Gly(APRPG)ペプチドを、PEGをリンカーとしてTEPA-PCLの膜表面に修飾した(APRPG-miR-499)。この複合体を、Colon26 NL-17細胞皮下移植マウスに静脈内投与し、miR-499の効果を評価した。はじめに、血管正常化の指標としてmiR-499による血流改善効果を検討した。血流を有する血管を染色し、腫瘍内血管の血流の有無を評価した結果、APRPG-miR-499投与群において顕著な血流改善効果が認められた。次に、APRPG-miR-499の投与4日後にDOXを静脈内投与し、血管正常化作用によるDOXの腫瘍への集積性の変化を評価した結果、対照群と比較してAPRPG-miR-499の前投与によりDOXが腫瘍に有意に多く集積した。最後に、Colon26 NL-17移植マウスにAPRPG-miR-499を静脈内投与し、その4日後にDOXを静脈内投与することで、miR-499とDOXの併用療法による抗がん効果を評価した。miR-499とDOXの併用療法は、DOX単独療法と比較して有意にDOXのがん増殖抑制効果を増強した。miR-499について、これまでに報告したがん細胞増殖抑制作用に加え抗がん剤アシスタントとしての有用性が明らかになり、新たながん治療戦略の創出に寄与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前より検討してきたsiRNA内封抗体修飾脂質ナノ粒子のがん治療への応用展開に加え、microRNA-499(miR-499)による抗がん剤の作用増強効果検討を引き続き行い、miR-499が血管正常化を介して抗がん剤ドキソルビシンのがん組織への集積向上、延いては抗がん作用増強に寄与することを明らかにした。さらに、siRNAのリポソームへの内封法として凍結融解を提唱し、その簡便かつユニークなsiRNA内封技術を用いて種々のデータを蓄積した。miR-499に関する研究、および凍結融解によるsiRNAの内封に関する研究については筆頭著者または共著者として既に論文化を達成している。以上のことを踏まえ、順調に研究を進展させたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、新生血管正常化がEPR効果によるDDS製剤の腫瘍蓄積に及ぼす影響の解析を行いたいと考えている。担がんマウスにmiRNA製剤を静脈内投与後、時間を変えてFITCデキストランを静脈内投与し、一定時間後に腫瘍の凍結切片を作成する。この切片を蛍光顕微鏡観察し、FITCデキストランの血管透過性の評価を行う。本検討結果を参考に、担がんマウスにmiRNA製剤を静脈内投与後、DiIC18蛍光標識リポソームを静脈内投与し、同様に凍結切片を作成する。この切片を蛍光顕微鏡観察し、DDS製剤の腫瘍蓄積に及ぼす血管正常化の影響を評価する。 また、腫瘍選択的核酸送達技術として、HB-EGF抗体修飾脂質ナノ粒子の開発を進める。がん細胞ならびにがん間質から産生されるheparin-binding EGF-like growth factor(HB-EGF)は、がんの悪性化や抗がん剤治療に対する抵抗性に関与することが知られており、がん治療の有力な候補標的分子である。先進的な創薬ツールを用いて腫瘍微小環境のHB-EGF発現を制御し、がんの増殖・転移・治療抵抗性に係るネットワークを壊滅する治療法の開発を目指す。本目標の実現のため、HB-EGFを標的とするsiRNAを封入した抗HB-EGF抗体修飾脂質ナノ粒子(HB-EGF LNP)を開発する。siRNAの導入ベクターとしては、申請者らが開発した dioleyl phosphate-diethylenetriamine derivative (DOP-DETA) を主成分とする新規脂質ナノ粒子(D-LNP)を用いる。これまでにD-LNPを用いて 、0.5 nM という低濃度siRNAで 80%以上の遺伝子サイレンシングを誘導できることがわかっている。そこで本年度には、同程度の siRNA 濃度で効率的にHB-EGFをノックダウンできるsiRNA配列を決定する。
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Research Products
(5 results)