2016 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子多様度解析を用いたアントクメ個体群消滅危険性の予測
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15J11734
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
秋田 晋吾 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アントクメ / nad3-16s / 生物系統地理 / マイクロサテライト |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,1)昨年度行なった系統地理解析の追試,2)マイクロサテライトマーカーの開発を行った。 1)昨年度,系統地理解析で用いたmtDNAのcox3の部分領域(561bp)では解像度の高い結果は得られなかった。そこで,より変異率の高いと考えられているmtDNAのnad3-16s領域(1944bp)を用いて,各産地から採集した246個体を解析した。その結果,27のハプロタイプが認められた。各産地のハプロタイプ数は串木野での10を除き,1~4程度であった。小値賀と原島を除いたそれぞれの産地で固有のハプロタイプが認められ,それは串木野で9と多かった。また,本州太平洋岸(平沢,仁科,早田浦,土佐清水)と,九州西岸(串木野,長島,野母崎,新三重)のそれぞれで,共通するハプロタイプが認められた。しかし,φstの値から,仁科と早田浦(0.000),小値賀と原島(0.000)を除き各産地間で大きな遺伝的分化が認められた。以上から,アントクメの各産地間では遺伝的交流が少ないこと,串木野は個体群がかなり古くから維持されていることが示唆された。これらの結果から,アントクメは鹿児島以南から北上するように分布を拡大したと考えられるが,各地の遺伝的分化が大きいため,マイクロサテライトも用いてさらに詳細な解析を行っていく予定である。 2)アントクメのマイクロサテライトマーカーを開発するために,次世代シークエンサーを用いて,全ゲノム解析を行った。その結果,61.5Mbpのゲノムデータを得て,2074のSSRを探索できた。探索した配列は,2塩基(415)と3塩基の反復配列が多く,全体の83.9%を占めた。3~6塩基かつ10回以上反復する領域を選定し,多型の有無を検証したところ,11個のマイクロサテライトマーカーが作成できた。現在,開発したマイクロサテライトマーカーを用いて解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度,系統地理解析の追試に用いたnad3-16sが,今まで使用していた酵素では増幅しなかったため,試薬や条件の検討に時間を要した。しかし,マイクロサテライトマーカーの開発や解析については,これまでのところ順調にできているので,問題なく終了できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロサテライトマーカーの開発が終了したので,順次サンプルの解析を行う予定である(現在解析中である)。また,本研究課題の最終年度で予定していた遺伝子多様度と環境変異への耐性について,培養で検証する。
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Research Products
(2 results)