2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J11753
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
徐 鵬宇 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 水中反応 / 新規不斉触媒 / ケイ素 / 不斉共役付加反応 / ルイス酸―界面活性剤一体型触媒 / 単層カーボンナノチューブ / 1,3-双極子環化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
水中におけるケイ素の不斉共役付加反応の研究において、室温、空気存在下で安定に存在することができ、かつ安価な二価の銅触媒に注目し、これまでのケイ素の不斉マイケル付加反応の条件及び結果を改善すべく、より温和な条件下、すなわち水溶媒中、また基質一般性がより広いケイ素の不斉マイケル付加反応の開発に取り組み、有機ケイ素化合物の合成を試みた。アセチルアセトナト銅(II)塩と光学活性ビピリジンリガンドL1を1:1で混合し、紫色針状結晶を形成させた上、結晶をそのまま反応に用いたところ、水中において効率的にケイ素の不斉マイケル付加反応が進行することを見出した。本触媒系は安価な二価の銅を用いたケイ素の不斉マイケル付加反応の初めての例である。これまでに報告されているケイ素の不斉マイケル反応が厳密な無水条件下で進行し、かつ十分な基質一般性が必ずしも得られていないのと比べ、本反応は室温下という非常に温和な条件下で進行し、反応性、選択性、基質適用性等の幅広い面から非常に優れていると言える。 また、水中におけるπ電子材料を用いた新規不斉触媒の開発及び応用の研究において、水中におけるLASC、SWNT、及びその相互作用をフルに活用することにより、これまでの水中反応の欠点を補いつつ、これまでに見られなかった新しい反応性、触媒活性を見出すことが可能となった。水中おいて、これまでの触媒系と一線を画するSWNTを用いた新規触媒系を開発、応用することにより、SWNTに新たな活用法を与え、化学のみならず、物性物理などの幅広い分野に大きな影響を及ぼすものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水中におけるケイ素の不斉共役付加反応の研究において、ケイ素の不斉マイケル付加反応の開発に成功し、これまでにない幅広い基質一般性を得られただけでなく、本反応は、完全有機溶媒中ではほとんど反応が進行しない一方、プロトン豊富な水環境下において、反応が特異的に進行するという大変興味深い事実がわかった。これは、本反応において水が必須であることを示している。さらに、THF―水混合溶媒を用いて均一系を構築し、反応を行ったところ、すべての場合において反応は進行したものの、THFの使用量の増加に伴い銅―リガンド錯体の溶解性が増し、それとともに反応の選択性が大幅に低下する結果となった。本例は、不均一系触媒が均一系触媒よりも高い立体選択性を与える非常に興味深い例であり、水中におけるケイ素の不斉マイケル付加反応の初めての例である。 また、水中におけるπ電子材料を用いた新規不斉触媒の開発及び応用の研究において、Lewis酸界面活性剤一体型触媒(LASC)ととシングルウォールカーボンナノチューブ(SWNT)及びその他のπ電子材料を様々な条件で組み合わせることにより、水中において最も分散性の高い条件を見出した。すなわち、LASC-SWNTを用いた新規触媒系の構築に成功し、化学手法、物理解析手法等を駆使して当触媒の性質を解明したのみならず、反応適用への初期検討も行われた。その結果、これまで見られなかった特異的な活性等が当新規触媒系により生み出され、水中における新規不斉反応開発の更なる飛躍に繋がった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、まず昨年度の研究にて得られた新規触媒の知見、理解を基に、さらに他の金属へ展開し、金属中心の電子状態とSWNTの相互作用の関係を明らかにする。そして得られた情報を基に、これまで水中において困難であった反応へ応用する。具体的にはまず得られたLASC-SWNT新規触媒の不斉1,3-双極子環化反応への応用を更に深め、反応開発を進める。またこの過程で、新規触媒を実際反応に応用した知見をベースに、達成点、問題点を洗い出し、新規触媒を微調整しつつも、更に不斉ダイレクトアルドール反応などの新しい反応に応用、開発する。
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