2016 Fiscal Year Annual Research Report
自然言語の統一的理解に向けた量化表現・数表現・複数表現の数理モデル構築
Project/Area Number |
15J11772
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田中 リベカ お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 形式意味論 / 量化表現 / 数表現 / 複数表現 / 依存型理論 / 含意関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、英語の量化表現・数表現・複数表現について、依存型理論という数学的枠組みに基づいて、照応・前提現象との相互作用や推論的性質までを考慮した網羅的な分析を与えることである。量化表現・数表現・複数表現といった、自然言語の名詞句の中心部分を担う表現に着目し、依存型理論という定理証明器による実装とも相性が良い枠組みで分析を与えることで、含意関係を機械で判定するための理論的基盤を得ることを目指す。 本年度の研究では、前年度に着想した複数照応の分析(主に分配的解釈と呼ばれる解釈に注目した)についてさらに考察を進め、国際ワークショップにて発表を行った。特に、Bekki & Mineshima (2017)による依存型意味論(依存型理論に基づく意味論の枠組みの一つ)に基づく分析を与えることで、照応の解消に推論を必要とする例を扱えることを確認し、先行研究に対するアドバンテージを示した。 また量化表現については、全称量化の役割をもつ"every"のような表現について、依存型理論に備わっている量化子を直接使用した意味記述と、本研究で与える一般化量化詞としての意味記述が、相互に導出可能であることを確認した。これにより、量化表現の意味表示の構造をある程度仮定することも可能になった。 また、量化表現・数表現・複数表現の意味記述に関連して、依存型意味論における前提の記述についての分析も行った。命題的内容の存在を前提にするような場合について依存型意味論の枠組みで検討し、問題点を整理し、論文誌への投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複数表現のもつ分配的解釈について分析を与えることができた一方、それ以外の解釈の分析や、それらの解釈を可能にする複数表現の形式的扱いについては、依然として調査段階である。特に、これまで提案されてきた複数表現の意味記述を依存型理論の枠組み上でどのような実現するかということ、また推論の計算までを視野にいれた場合にどのような形式が適切かということに関して、今後ひき続き検討が必要であると考えられる。 量化表現・数表現については、意味表示を与え、推論の計算についても理論上は可能となってきたものの、実際にCoq上で実装を行うのは次のステップである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、既に分析が進んでいる量化表現、数表現についてCoqでの推論の導出を試みる。ただし、いくつかの推論の例については、文の前提の内容が必要になる。依存型意味論の枠組みにおいては、前提解消の計算は型チェックと証明探索によって行われる。そのため、Coqでの推論の計算とは別に、前提を解消する枠組みが必要となると考えられる。このような型チェック・証明探索を行うシステムとしてはBekki & Sato (2015) や佐藤 (2017) による研究があり、たとえば彼らのシステムと接合して、前提の解消を伴う推論の計算までの一連の処理を実現できるかは検討すべき課題であると考えている。また、複数表現の形式的扱いについては、ひき続き検討を続けていく。
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