2016 Fiscal Year Annual Research Report
界面制御による新規単分子ダイオードの創製及びその電子状態の解明
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15J11830
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小本 祐貴 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 分子エレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画における第2年度の計画は、初年度に構築した電流-電圧特性計測システムを用いて種々のアンカー基を持つ単分子接合の電流-電圧特性計測を行い、電子状態を解明することであった。今年度は昨年度に構築した電流-電圧特性計測システム、熱起電力測定システムを用いて単分子接合の電子状態を明らかにした。-SH、-NH2のアンカー基の二置換ベンゼンの電流-電圧特性計測、電流-電圧特性計測と熱起電力測定によるフラーレン単分子接合の電子状態計測について研究した。 1,4-ベンゼンジチオール(BDT)の電流-電圧特性計測によりBDT単分子接合の界面構造を決定した。BDTはチオール基を二つアンカー基として持つ単分子接合のモデル系として最もよく使われる分子である。昨年度に構築した電流-電圧特性計測システムを用いてBDT単分子接合の電流-電圧特性計測を行い、BDT単分子接合の電子状態を実験的に決定した。理論計算と実験結果を比較することによりBDT単分子接合の界面構造を決定することに成功した。チオール基は界面構造の差により単分子伝導度が大きく異なることと提唱されていたが、その界面構造は詳細にはわかっていなかった。本研究課題では、界面構造の差に起因する整流特性の観測を目的としているために、界面構造の同定法を確立したことは目的達成の大きな足掛かりとなる成果である。 さらに、チオール基とアミノ基を持つ1,4-アミノベンゼンチオール(ABT)の電流-電圧特性計測を行った。実験の結果、ABT単分子接合は統計的には整流特性を示さないことが明らかになった。この結果はABTのような小さい共役分子では、片側のアンカー基からもう片側のアンカー基まで影響を与えたことにより、アンカー基が異なっていてもカップリングの非対称性がなくなった結果であると解釈した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に自ら構築した単分子接合の電流-電圧特性・熱起電力同時測定システムを用いて、二置換ベンゼンやフラーレン単分子接合について研究を行った。特に、1,4-ベンゼンジチオール(BDT)単分子接合に本計測法を適用することで3つの異なる伝導状態を実験的に分離することにはじめて成功した。理論計算と実験結果を比較することにより、伝導度の差は界面構造に由来し、その吸着構造を明らかにした。さらに、どの吸着構造でもフェルミ準位に近い軌道は占有軌道であるHOMOであり、またHOMOのエネルギー位置は吸着構造によりあまり変化せず、吸着構造によって変化するのは、金属と分子の波動関数の重なりの大きさであることも明らかにした。本研究課題では、界面構造の差に起因する整流特性の観測を目的としているために、界面構造の同定法を確立したことは目的達成の大きな足掛かりとなる成果である。 非対称なアンカー基を持つ分子に関しても実験を行い、整流特性が統計的に発現しないことを確認した。アンカー基が異なっていてもカップリングの非対称性がなくなった結果、小さな共役分子では単分子ダイオードとなりえないことを明らかにし、今後の研究で用いる分子の指針を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
非対称なアンカー基を有する分子の電流-電圧特性計測により、非対称なアンカー基を持つ場合でも共役系が広がる小さな分子では整流特性が発現しないことが明らかになった。測定分子にアンカー基と分子骨格が共役していない分子を用いることにより単分子ダイオードの創出を行う。新しいダイオードの候補分子、及びその誘導体の詳細な物性計測を行い、分子ダイオードとしての最適化を行う。誘導体として、電子求引基、電子供与基を置換させ、アンカー基の電子密度を変調させた分子の電流-電圧特性を計測する。新しく導入した置換基がアンカー基となっていないか調べるために、誘導体は、XPS測定を行い、金基板表面への吸着構造を決定する。また、金、白金、イリジウムなどの種々の金属を電極に適用することにより、金属電極の変調も行う。アンカー基の電子密度を変調し得られたデータ、アンカー基が非対称性である分子の電流-電圧特性から、分子ダイオードのモデルを検討し、整流特性の最適化を行う。今年度は種々の分子及び金属材料を用いて系統的に実験を行う。
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Research Products
(9 results)