2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J11955
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
根岸 走 東京工業大学, 大学院生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 蛋白質結晶 / 超分子構造体 / ジスルフィド結合 / 多角体結晶 / ナノカップ構造体 / ミオグロビン結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請では,ジスルフィド結合による架橋部位の設計および結晶溶解により,蛋白質結晶から特異な超分子構造体を切り出し,蛋白質超分子構造体の新たな構築手法の確立を目指す.平成27年度では,(1)昆虫細胞内で結晶化する多角体結晶を利用し,結晶内特有の超分子ナノカップ構造体を溶液中へ切り出した.また,(2)ミオグロビン結晶を利用し,結晶内の超分子リング構造体を切り出すために,変異体設計および結晶化条件の検討を行った. (1)多角体結晶内のナノカップ構造体を溶液中で保持させるために,初めにジスルフィド結合による架橋部位の設計を行い,変異体の作製・結晶化を行った.続いて,結晶内でジスルフィド結合を形成させるために,過酸化水素により変異体結晶を酸化させた.SPring-8の微小結晶のためのX線結晶構造解析を利用し,結晶酸化後,変異導入したCysによる結晶内ジスルフィド結合の形成を観測した.最後に,ナノカップ構造体を溶液中へ切り出すために,酸化した変異体結晶を塩基性溶液中で溶解させた.切り出された構造体の分子量をMALDI TOF MSおよびSDS-PAGEにより同定した結果,ナノカップ構造体の分子量とよい一致を示した.以上より,結晶内ジスルフィド結合の形成部位を設計することにより,多角体結晶からナノカップ構造体を切り出すことに成功した. (2)上記(1)で確立した手法を拡張するために,ミオグロビン結晶を利用し,超分子リング構造体の切り出しを試みた.まず,リング構造体を切り出すために,結晶内でのジスルフィド結合形成部位を設計し,その変異体の培養・精製を行った.現在,ミオグロビン変異体の結晶化条件の検討を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は,これまで培ってきた蛋白質工学技術や分析手法を駆使し,結晶内に存在する超分子構造体を溶液中へ切り出す手法を確立するというチャレンジングな内容である.従来,結晶内超分子構造は溶液中で保持することが困難であると考えられていたが,平成27年度の研究成果により,多角体と呼ばれる蛋白質結晶から結晶内特異構造であるナノカップ構造体を溶液中へ切り出すことに成功した.この成果は,蛋白質分子の精密な設計と最先端のX線結晶構造解析の利用により初めて達成できたと考えており,すべての蛋白質結晶から様々な超分子構造体を切り出すことが可能であることを示唆している.現在論文作成も進めており,当初の計画以上の進展であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降では,平成27年度で確立した手法の拡張性を検証するために,ミオグロビン他,様々な蛋白質により同法を実施していく予定である.そのために,既にProtein Data Bankから数種類の蛋白質結晶について調査を行い,有用な蛋白質分子を選定した.新たな蛋白質分子の変異体設計・培養・精製・結晶化を進めていく予定である.
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Research Products
(5 results)