2015 Fiscal Year Annual Research Report
時系列RNA-seqデータを用いた周期発現する遺伝子群の外部刺激に対する応答解析
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15J12133
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
東 孝信 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 体内時計 / 植物工場 / 遺伝子発現解析 / レタス |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の成果として,「連続明期及び明暗周期条件において周期変動するレタス遺伝子群の選抜」「光刺激の違いによってレタス生育量の有意な低下と生育のばらつきが発生する条件を発見」「生育に悪影響を与える特殊な光条件下では遺伝子発現の周期性が維持されないことを定量的に評価」が挙げられる. まずは標準的な環境下で周期変動する遺伝子群の選抜を行うため,連続明期及び明暗周期条件で栽培されたレタスについて,2時間おき48時間の時系列サンプリングを行い,RNA-Seq解析によって網羅的な遺伝子発現量を取得した.その中から,各光環境下で周期変動する遺伝子群を統計学的に選抜し,選抜された遺伝子群のうち共通するものを「標準的な環境において周期変動するレタス遺伝子群」として決定した.これにより,外部刺激に対する応答解析を行う際のターゲットを決定することができた. また,上記と並行して異なる光刺激での栽培試験を行い,レタスの生重量及び生育のばらつきにどのような違いが生じるか評価を行った.この際,設定する光環境として,「レタスの体内時計が生み出す概日リズムが,外環境の光刺激に同期できる/できない」とした.この結果,外環境と同期できる環境に対して,同期できない環境では生育量が有意に低下し,生育のばらつきも有意に増加することが明らかとなった.環境のばらつきを考慮し,かつ統計学的な有意差をきちんと導出するために,各条件で栽培試験を3反復以上,個体数もそれぞれ500以上を取り扱っている. 同期できない環境で栽培されたレタスに対して,周期変動している遺伝子群がどのような応答を示しているのか明らかにするため,複数の個体に対してRNA-Seq解析を実施した.その結果,普段は周期変動している遺伝子群が,同期できない環境下では集団として周期変動を示さない結果が得られた.体内時計の不安定性が生育に影響を与えていると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度において,「周期変動する遺伝子群の選抜」「周期変動する遺伝子群に影響を与えると考えられる栽培環境の決定」「決定した栽培環境における表現型への影響評価」「決定した栽培環境における周期変動する遺伝子群の発現パターンの不安定性」を明らかにしており,これらの結果は当初計画していたもの以上に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,「栽培環境を1つ増やして3反復の実験を行う」「各栽培試験区においてRNA-Seqデータの充実を目指す」「生重量以外の表現型のデータとして,スクロース濃度と酸化ストレスを加える」の3つを考えている. 特に3つめの表現型のデータの追加は重要度の高い項目であると考えており,【同期できない環境が植物にとって何かしらのストレスとして作用しているのではないか?】という仮説を考えている.この仮説の検証として酸化ストレスの定量化を狙っており,現在レタス葉のROS染色を実施している.強光や熱,乾燥といったストレスは有名だが,光周期(体内時計の非同期)によるストレスは報告例がなく,定量化できれば新たな知見として報告できると期待している.
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Research Products
(7 results)