2015 Fiscal Year Annual Research Report
多重機能集積化による高活性ナノワクチンシステムの構築とがん免疫治療への展開
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15J12180
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
能﨑 優太 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 免疫ワクチン / pH応答性高分子 / TLRリガンド / リポソーム / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は抗原キャリアの樹状細胞(DC)活性化機能を高めるために、TLR9のリガンド分子であるCpG-DNAをpH応答性高分子修飾抗原キャリアに複合化させ、その複合化方法が免疫誘導機能にどのような影響を与えるか検討した。卵黄由来ホスファチジルコリン、pH応答性高分子、カチオン性脂質で構成されるリポソームにモデル抗原オボアルブミン(OVA)を封入し、抗原キャリアとして用いた。リポソーム作製時にCpG-DNA溶液を混合するPre-mix複合体とリポソームを予め作製してからCpG-DNA溶液を混合するPost-mix複合体を作製した。動的光散乱法により、これらの複合体の粒子径は約100 nmで、ゼータ電位は約-60 mVであった。蛍光ラベルしたCpG-DNAを用いて複合体を作製し、マウス樹状細胞由来株DC2.4細胞に添加し、CpG-DNAの細胞内における局在を顕微鏡により観察した。その結果、CpG-DNA溶液単独では添加した大部分のCpG-DNAが細胞表面に局在していたが、複合体を用いるとCpG-DNAは細胞のエンドソーム/リソソームに局在することが明らかとなった。複合体で処理したDC2.4細胞のサイトカイン産生を調べるとPre-mixはPost-mix複合体よりも多量のIL-12の産生を誘導したが、共刺激分子(CD80)の発現はPost-mix複合体の方が高くなった。さらにE.G7-OVA腫瘍を形成させたマウスに複合体を免疫するとPost-mixはPre-mix複合体よりも強い抗腫瘍効果を示した。CpG-DNAがリポソーム内部に封入されるPre-mix複合体よりも、リポソーム表層に吸着したPost-mix複合体の方が、エンドソーム内のTLR9にCpG-DNAに効果的に送達し、CD80分子を高発現させることによって樹状細胞の細胞性免疫を誘導する能力を高めたものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TLRリガンド分子であるCpG-DNAをナノワクチンシステムに複合化させ、樹状細胞の活性化機能と担がんマウスに対する治療効果を調べることで、細胞性免疫誘導に最適なナノワクチンの組成を細胞レベルと個体レベルで明らかにした。これらの成果について4件の学会発表を行い、現在学術論文としてまとめている。またCpG-DNA以外のTLRリガンド、Poly(I:C)を複合化させた場合の免疫誘導についても評価しており、樹状細胞活性化機能の強化について検討している。さらに免疫抑制状態解除機能を目指したSTAT3-siRNAデリバリーキャリアの調製について実験を行っており、一定の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた知見を基に、CpG-DNA以外のTLRリガンド、Poly(I:C)などをさらに集積化することによってナノワクチンシステムの免疫誘導機能の最大化を図る。また腫瘍中に存在する樹状細胞が発現している免疫抑制シグナル分子、STAT3に対するsiRNAをデリバリーできるナノキャリアを調製する。調製したナノキャリアで樹状細胞を処理し、STAT3 mRNA発現量をリアルタイム逆転写PCR法で評価することで、最もSTAT3ノックダウン効果が高いキャリアの調製法を明らかにする。以上の実験で個別に行ってきたCpG-DNA、Poly(I:C)、STAT3-siRNAデリバリーに関する知見を統合し、高活性なナノワクチンシステムの実現を目指す。
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