2015 Fiscal Year Annual Research Report
同位体グラフェンによるフォノン・チャージキャリアの制御
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15J12244
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
安野 裕貴 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | グラフェン / 合成 / フォノン / ゼーベック係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はグラフェンの熱電変換材料への応用を目指し、グラフェンの導電率の向上と熱伝導率の低減、ゼーベック係数の評価を目的としている。熱電変換材料への応用には、高い電気特性を維持したまま、熱伝導率を大幅に下げる必要がある。その中で今年度は①「反応中の温度・ガス流量の調整による、グラフェンドメインの拡大と形状制御・高導電率グラフェンの作製」、②「同一ドメイン内同位体グラフェンヘテロ構造作製に向けたガス流量制御と新合成装置の作製」、③「ゼーベック係数測定に向けた装置の組み立てと測定系の構築・設計」に取り組んだ。①の研究では、グラフェン合成中の温度とガス流量の調整を行いグラフェンのドメイン拡大を図った。その結果ドメインサイズは直径で25倍程度向上し、電界効果移動度(電子の動くスピード)も5倍程度向上した。ドメイン拡大によるドメイン境界の低減、欠陥サイトの減少によりグラフェンの品質が向上した。②の研究では、合成中の同位体炭素源ガスの切り替えにより、同一ドメイン内同位体グラフェンヘテロ構造を作製するが、そのガス切り替え時に大量にガスが流入し接合界面での欠陥形成が問題となった。その改善に向け、ガス切り替え時のガス流入方法を工夫しガス流入量を制御した。その結果、接合界面で欠陥を示すピークは確認されず、良好な接合界面を有したヘテロ構造作製に成功した。③の研究では、マイクロサイズの薄膜試料のゼーベック係数測定に向け、デバイス構造の提案とマスクパターンの作製を行い、測定に必要な装置の改良を行った。また、測定系の構築も必要であり、その構築と条件出しを行った。その際に自動測定によるプログラミングを組み、実験工程の効率化も実現した。これらにより、グラフェンのゼーベック係数の測定手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
グラフェンのフォノン制御・熱電変換応用に向け、高導電率・低熱伝導率グラフェン膜の合成を目標としている。その過程においてこれまで、グラフェンのドメインの拡大化による高導電率化、同一ドメイン内同位体グラフェンヘテロ構造作製に合成中のガス流入の制御、さらに熱電性能評価に欠かせないゼーベック係数測定装置と測定系の設計に取り組んでいる。グラフェンのドメインや品質は、合成中の条件(温度・ガス流量・圧力)に非常に敏感であるため、条件の最適化により単結晶のサイズが25倍程度の向上、電界効果移動度が5倍程度の向上が見られた。また、同一ドメイン内同位体グラフェンヘテロ構造作製について、反応中の炭素源ガスの切り替え時にガスが多量に流れ、結晶性の悪い界面の形成が問題となっていた。そこで、ガス切り替え時の流量を制御しながら流入することにより欠陥のない高品質なヘテロ界面が形成された。これらの結果を活かし、さらなるガス流量の制御と同位体グラフェンヘテロ構造の界面幅の制御に向けた新合成装置の作製に着手している。熱電性能評価にはゼーベック係数の測定が必要不可欠である。しかし、グラフェンデバイスのようなマイクロサイズの薄膜試料のゼーベック係数測定には、マイクロサイズのヒーターや熱電対を測定試料両端に作製するなど特殊な構造が必要である。その構造設計や測定に向けた装置の改良、測定の自動化に向けたプログラミングを組むことにより、測定手法の確立を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1年度目の研究活動において、グラフェンのドメイン拡大の指針を得るだけでなく、同一ドメイン内同位体グラフェンヘテロ構造作製に向けた合成中のガス切り替え時の問題の浮き彫りとその改善策を発見した。これらの知見を基に、現在着手している新合成装置を作製させ、よりガス流量や同位体グラフェン構造の界面幅の制御を可能にした合成条件を得る。そして、条件の最適化によって得られた同一ドメイン同位体ヘテログラフェン膜の熱伝導率を測定する。特に、界面の数や界面幅を変化させた際のグラフェン膜の熱伝導率を評価することにより、グラフェンのフォノン制御の実現やフォノンの平均自由行程と界面間距離の関係性によるフォノン散乱への影響を調べることができる。これらの研究を基にさらなる低熱伝導率の実現を目指す。また、熱伝導率測定の際にはグラフェン膜を両持ち梁構造にする必要があり、この際のグラフェン膜のたわみがその熱伝導に影響するおそれがある。そこで、グラフェンを転写する基板を前処理し特殊な構造を先に作製することによって、その改善に向け現在取り組んでいる。また、これらのグラフェン膜のゼーベック係数の測定も重要である。しかし、1年度目の研究活動により、すでにグラフェン膜のゼーベック係数の測定手法を確立している。そのため、同位体によるグラフェンのフォノン制御を、12C-グラフェン、13C-グラフェン、12C-13C混合グラフェン、12C/13C-グラフェンヘテロ接合のそれぞれのグラフェンの熱伝導率測定から評価すると共に、それぞれのグラフェン膜の導電率測定・ゼーベック係数測定から熱電性能の向上について評価する。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] Defect engineering of graphene for thermoelectrics2016
Author(s)
Yuki Anno, Yuma Yasui, Masato Takeuchi, Masaya Matsuoka, Kuniharu Takei, Seiji Akita, Takayuki Arie
Organizer
The 11th Annual IEEE International Conference on Nano/Micro Engineered and Molecular Systems
Place of Presentation
Hotel Matsushima Taikanso, Miyagi, Japan
Year and Date
2016-04-17 – 2016-04-20
Int'l Joint Research
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