2016 Fiscal Year Annual Research Report
海綿動物を起源とする複雑骨格天然物の生合成マシナリーの解明
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15J12340
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中嶋 優 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 酸化酵素 / 天然物 / 複雑骨格形成 / 多機能性 / X線結晶構造解析 / CaxE / AusE / PrhA |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において申請者は、研究対象である酸化酵素CaxEの機能解明に向けて取り組んだ。申請者は既に本酵素のin vitro解析により、本酵素がジケト構造の構築を担うことを明らかにしている。そこで、本酵素が有する特異な反応を詳細に理解すべく、X線結晶構造解析により類似酵素との比較を行うこととした。 比較対象とした酵素はAusE及びPrhAであり、CaxE同様の酸化酵素である。これら酵素群は共に天然物の複雑骨格形成に重要な働きを担うだけでなく、多段階酸化反応を触媒する。しかし、両酵素共に結晶構造は解かれておらず、その詳細な反応機構は未だ不明であった。申請者は大腸菌にて発現させたAusE及びPrhAの精製を行い、非酸素存在下における結晶化に成功し、X線結晶構造解析により両酵素の構造決定に至った。詳細な反応機構の解明を行うべく、酵素結晶に基質を導入し、再度X線結晶構造解析を行うことで酵素基質複合体を獲得した。この結果、両酵素が有する多機能性を理解すると共に、酵素活性に重要なアミノ酸残基を見出した。加えて、部位特異的変異体の作製により新規化合物の創出に成功している。多段階酸化反応を引き起こす酵素基質複合体の結晶構造解析の報告例は希少であり、その学術的価値は高いだけでなく、構造解析を基に生み出された変異酵素は、天然型酵素を超えた前例のない多機能性を獲得した。 さらに酸化酵素CaxEの結晶化に向けて着手した。本酵素は非常に不安定であり、シャペロンタンパク質との共発現においてのみ発現に成功している。しかしながら、本条件はタンパク質結晶化には不向きであった。そこで、発現条件を改善すべく、ホストである大腸菌での発現に最適化した人工遺伝子を調製し、異種発現を行った。その結果、発現状況は改善し、現在、その結晶化に向けて条件検討を行っている。なお、本研究は国際学会を含めた複数の学会で発表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において申請者は天然物の複雑骨格形成を担う酸化酵素の詳細な反応機構の解明を行うべくX線結晶構造解析に着手した。課題としている酸化酵素CaxEとの比較を行うべく、別の酸化酵素AusE及びPrhAにも取り組んだ。 申請者はタンパク質の結晶化やX線結晶構造解析に当該年度より初めて取り組んだ。加えて、一般的に酸化酵素は不安定であり結晶化が難しいとされる。しかしながら、申請者は既にAusE及びPrhAの結晶化に成功し、各種解析プログラムやアプリケーションを用い構造決定に至っている。酵素基質複合体の取得は複雑骨格形成に重要なアミノ酸残基の特定に成功し、変異導入試験により、酸化酵素に新たな活性を人為的に与えることに成功しており学術的にも意義深い。 本研究は国際学会を含めた複数の学会で発表済みであり、高い評価を得ている。現在Nature誌へ投稿論文を準備中である。 さらに、酸化酵素AusE及びPrhAのX結晶構造解析により習得した技術や知識は、酸化酵素CaxEにおける結晶化や構造解析に応用可能であり、今後の研究がより進むことが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績に示したCaxEに対して、引き続き機能解析を続けることとしている。具体的にはCaxEのX線結晶構造解析である。X線結晶構造解析はタンパク質の構造情報を得る手法の1つであり、基質との複合体構造が得られれば、CaxEが活性を有するための重要なアミノ酸残基を見出すことができる。それに加えて、より詳細な反応機構の解明を行うことが可能である。 しかしながら、従来のシャペロンタンパク質との共発現によるCaxEの発現は結晶化に不向きであり困難な課題であった。そこで、当該年度において申請者は、ホストである大腸菌での発現に最適化した人工遺伝子を調製し、異種発現を行った。その結果、共発現を用いずに、CaxE単独での発現に成功している。 そこで、申請者は今後の研究の推進方策として、単独発現に成功したCaxEを用いてタンパク質結晶化条件の検討を行う。まず、陰イオン交換カラムやゲル濾過クロマトグラフィーなどによる多段階のタンパク質精製を行う。続いて得られた高純度CaxEに対して600条件以上のリザーバー条件の検討を行い、結晶化を目指す。酸化酵素CaxEは酸素に対して不安定であることから、結晶化条件は非酸素存在下においても検討する。結晶化条件が得られれば、X線を用いた測定、及び各種プログラムによる解析により構造決定を行う。さらに、基質との複合体構造を取得すべく、得られた結晶に基質を導入し、X線結晶構造解析を行う。 得られた酵素基質複合体の情報から活性に重要なアミノ酸残基を見出し、変異導入を行うことでAusEやPrhA同様に新たな活性を人為的に与えることができるかを検討していく。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Discovery of key dioxygenases that diverged the paraherquonin and acetoxydehydroaustin pathways in Penicillium brasilianum2016
Author(s)
Matsuda, Y., Iwabuchi,T., Fujimoto, T., Awakawa,T., Nakashima, Y., Mori, T., Zhang, H., Hayashi, F., Abe, I.
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Journal Title
J. Am. Chem. Soc.
Volume: 138
Pages: 12671-12677
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Stereospecific prenylation of tryptophan by a cyanobacterial post-translational modification enzyme2016
Author(s)
Okada, M., Sugita, T., Akita, K., Nakashima, Y., Tian, T., Li, C., Mori, T., Abe, I.
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Journal Title
Org. Biomol. Chem.
Volume: 14
Pages: 9639-9644
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] X-ray Crystal Structure Analysis of Multifunctional Dioxygenases in Fungal Meroterpenoid2017
Author(s)
Nakashima, Y., Mori, T., Hoshino, S., Okada, M., Awakawa, T., Senda, M., Senda, T., Abe, I.
Organizer
Directing Biosynthesis V
Place of Presentation
The University of Warwick (Coventry, UK)
Year and Date
2017-03-22 – 2017-03-23
Int'l Joint Research
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