2015 Fiscal Year Annual Research Report
微量の生体物質によって細胞機能を変化させる生体協調型高分子ゲルの開発
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15J12397
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
天本 義史 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 翻訳後修飾 / Bioorthogonal chemistry / ドラッグデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、1) 試験管中におけるタンパク質の翻訳後修飾を指向した有機触媒反応の構築、及び、2) 触媒分子のポリマー化による細胞内への導入に取り組んだ。 1) に関しては、試験管中で、細胞内の主要なタンパク質であるヒストンの特異リジン残基に対し、非酵素依存的なアセチル化に成功した。まず、特異点のみをアセチル化する事を指向し、ヒストンとDNAの複合体であるヌクレオソーム上の特定の場所に結合するリガンド分子と、特別研究員らが開発した触媒を複合化した。試験管内で再構成ヌクレオソームに対し触媒反応を行ったところ、50%以上の効率で、標的としたリジン残基が選択的にアセチル化される事が判明した。本手法は、天然のタンパク質に対しアセチル化する事ができるため、酵素と同様の手法により翻訳後修飾を導入する画期的な手法となると期待される。 2) については、触媒分子をポリマー化することにより、細胞膜透過性を劇的に上昇させ、細胞核に局在する事を見出した。ヒストンが存在する核で触媒反応を起こすため、触媒分子に細胞膜透過性を付与する必要がある。そこで、細胞膜透過性が向上すると知られるポリカチオンとジスルフィド結合を有するポリマーを設計、及び、合成した。細胞の培養液に添加したところ、触媒分子を有するペプチド単独では細胞膜を透過しないが、ポリマー化した触媒を用いた場合、2時間後に細胞の核内への局在が認められた。触媒分子を有するペプチドをポリマー化する事で細胞膜透過性を向上したという点で、新しい知見であり、今後の細胞内反応へ繋がる重要な成果と考える。 平成28年度以降は、当該年度に得られた知見を基に、細胞内での反応を達成し、細胞機能の変化に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題では、生体物質に応答し、細胞機能を変化させる高分子の開発を提案した。具体的には、タンパク質の翻訳後修飾を可能とする高分子を構築し、細胞内で反応を起こすことで、細胞機能の変化を目指している。 本年度は、当該目標に必要となる、①試験管中での触媒反応によるタンパク質の翻訳後修飾の手法、及び、②触媒を含むペプチドの細胞内への導入法を確立した。初年度の研究として、概ね計画通りに研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、細胞内のヒストンに対し、非酵素依存的な翻訳後修飾の導入を目指している。今後、細胞内の翻訳後修飾を達成し、細胞機能の変化を解析する予定である。 また、平成28年4月より、本特別研究員制度の受入研究者の変更により名古屋大学のナショナルコンポジットセンターに異動し、レオロジーやシミュレーションという新しい領域から、本研究に取り組んでいく予定である。
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Research Products
(4 results)