2015 Fiscal Year Annual Research Report
マクロ環を有する高酸化度ダフナンジテルペン類の収束的全合成
Project/Area Number |
15J12403
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 哲 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 全合成 / ラジカル反応 / ダフナンジテルペン / レジニフェラトキシン / 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はラジカル反応に基づく多様なダフナンジテルペン類の統一的合成法を確立することである。ダフナンジテルペン類は5/7/6員環の縮環した炭素骨格上の酸素官能基パターンにの違いにより様々な生物活性を発現することから、創薬標的として重要視される化合物群である。しかし、その構造の複雑さゆえ、今日まで全合成報告は一例しかなく、ダフナンジテルペン類の柔軟かつ効率的な合成法の確立は、創薬および有機合成化学の観点から最重要課題となっている。またラジカル反応は高度に官能基化された基質に対しても立体選択的に炭素結合を形成できる強力な合成手法であるが、分子間ラジカル反応における位置、立体の制御には困難が伴い、このような戦略による天然物の全合成はほとんど報告されていない。そのため、本研究により、創薬展開を志向したダフナンジテルペン類の統一的合成経路の確立と、ラジカル反応を用いた収束的な天然物合成の新たな方法論の提唱という2つの課題を解決することが出来る。 本年度、申請者はダフナンジテルペンであるレジニフェラトキシンの形式全合成を達成した。レジニフェラトキシンは強力なTRPV1アゴニストとして鎮痛活性を有しており、新規鎮痛剤の候補化合物として期待される天然物である。一方で、多数の酸素官能基および特異なオルトエステル構造を持つダフナン骨格の構築は極めて困難な課題である。申請者は本研究において、2種類のラジカル反応を鍵とする収束的な合成戦略を取ることにより、種々官能基を損なうことなく立体選択的にレジニフェラトキシンの3環性骨格を構築することに成功し、数工程でレジニフェラトキシンへと誘導可能な既知中間体の合成を完了した。今後はこの知見を基に、さらなる効率的な合成経路の確立と、ダフナンジテルペン類の網羅的合成に向けた検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、ラジカル反応を用いた収束的な方法論により、レジニフェラトキシンの形式全合成を達成した。本研究において最も重要な3成分ラジカルカップリングの最適化による収率向上および7-endoラジカル環化の立体制御に成功し、ダフナンジテルペン類の3環性骨格を効率的に構築することが出来た。得られた中間体に対し、二酸化セレンを用いた位置選択的酸化を検討したが、複雑に縮環した化合物の選択的な官能基化は困難を極めた。この課題を、計算化学を活用した綿密な基質設計と、膨大な実験により解決し、特定の基質のみが望む位置選択性を発現することを見出した。この結果、数工程でレジニフェラトキシンへと誘導可能な既知化合物の合成を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロ環を有するダフナンジテルペンの全合成に着手する。まず、オルトエステルを含むC環ユニットの改良合成経路の確立および、レジオシド類などにみられるC9,12,14位オルトエステルを有するC環ユニットの合成に取り組む。次に、開発したダフナン骨格構築の方法論に従い、3成分ラジカルカップリングと7-endoラジカル環化により収束的に3環性骨格を有する共通中間体を合成する。これに対し、天然物の構造に合わせたエステル化及び炭素鎖の付加を行い、閉環メタセシスによりマクロ環を有するダフナンジテルペン類であるレジオシドG、トリゴシソイドN、トリゴチリドAの全合成を行う。
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Research Products
(1 results)