2015 Fiscal Year Annual Research Report
求核的有機金属種の触媒的発生法の創出と複雑化合物合成への応用
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15J12437
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 太亮 東京大学, 薬学(系), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アルキルホウ素化 / π-アクセプター性 / 化学選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の目的通り、銅へのダミー配位子となり得るフェノキシド構造を持ったNHC配位子を様々合成し、アルキン、ピナコールジボラン、アルデヒドの三成分反応の検討を行った。目的とするアルキン、ピナコールジボラン、アルデヒドの三成分反応は実現できていないが、代わりに、合成したフェノキシド部位をもつ銅触媒によって、アルキン、ピナコールジボラン、アルキルブロマイドの三成分反応であるアルキルホウ素化反応の収率が10%程度向上することを見出した。このアルキルホウ素化反応の収率向上は配位子が目的とする、求核性を向上させる性質を保持しているためにもたらされたものだと考えている。その後このアルキルホウ素化反応の最適化に努めたが、基質一般性に難を残していたため、更なる配位子の探索を行った。探索の結果、新規のπ-アクセプター性NHC銅錯体を用いることによって、アルキン、ピナコールジボラン、アルキルヨージドの三成分反応であるアルキルホウ素化反応が効率よく進行し、先ほど述べた触媒系と比較して基質一般性も広いことが分かった。この配位子以外を用いると三成分反応ではなくピナコールジボランとアルキルヨージドの二成分反応が起こってしまう。それは通常の配位子ではアルキンとアルキルヨージドとの見分けができていないからであり、この配位子を用いることによってそれら化学種間の見分けが可能となったことは、触媒の力によって化学選択性が発揮できるという意義深い結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フェノキシド部位をもったNHC配位子による求核性の向上を望み、その効果は実際にある程度発現することが分かった。しかしながら十分な収率までは到達できなかったため、広範な探索の結果、アルキンとアルキルヨージドとの見分けが可能である新規のπ-アクセプター性NHC銅錯体を発見することができた。これは計画にはない効果をもつ配位子であるが、触媒の力によって化学選択性が発揮できるという意義深い結果を与え、更にはアルキルホウ素化反応を完全に実現することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
フェノキシド部位をもったNHC配位子による求核性の向上がある程度発現することが分かったので、配位子の更なる最適化により、当初の目的であるアルキン、ピナコールジボラン、アルデヒドの三成分反応を実現する。
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Research Products
(2 results)