2015 Fiscal Year Annual Research Report
脳内ナトリウム依存性糖輸送体を介した脳虚血性神経障害の発現機序の解明
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15J12469
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
山﨑 由衣 神戸学院大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / SGLT / 高血糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究において、脳虚血ストレス負荷後に誘導される高血糖状態が、その後の神経障害発現を増悪させることを報告している。しかしながら、虚血後高血糖による増悪機序は不明であったため、本申請者は、糖の作用する点として、sodium-glucose transporter (SGLT) に着目し、研究を行ってきた。SGLT はグルコースとナトリウムを細胞内へ共輸送する二次性能動輸送体であり、脳内には SGLT-1, 3, 4, 6 が存在する。これまでに、脳内 SGLT が脳虚血性神経障害の発現増悪に関与する可能性を明らかにしてきた。しかしながら、脳内 SGLT を介したこの増悪と虚血後高血糖との詳細な関連は不明であったため、 in vitro および in vivo の脳虚血モデルを用いて検討を行った。その結果、脳内 SGLT は虚血後高血糖状態、すなわち、通常よりも血糖値が高い状態でのみ、神経細胞死を増悪させている可能性が示唆された。また、脳内 SGLT アイソフォームの中でも、神経に発現していることが知られている SGLT-1 に着目した検討を行ったところ、脳内 SGLT アイソフォームの中でも、特に脳内 SGLT-1 が脳虚血性神経障害の発現増悪に関与している可能性が示唆された。さらに、脳虚血ストレス負荷後の脳内 SGLT-1 発現誘導機序の一部に、AMPK の活性化が関与している可能性が考えられた。加えて、脳内 SGLT を介したナトリウム流入が脳虚血性神経障害発現へ及ぼす影響にも焦点を当て、検討を行ったところ、脳虚血ストレス負荷によって高血糖状態が生じることで、脳内 SGLT を介したナトリウムの細胞内流入が過剰になり、脳虚血性神経障害の発現が増悪する可能性が示唆された。脳卒中に対する脳内 SGLT の役割を解明することは、本研究分野の発展にも多いに貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請者は、本研究課題である「脳内 sodium-glucose transporter を介した脳虚血性神経障害の発現機序の解明」を目的とし、これまで検討を行ってきている。以前から脳虚血後の高血糖状態に起因する神経障害発現の増悪機序において、脳内 sodium-glucose transporter (SGLT) が密接に関与することを提唱してきた。上述したように、平成 27 年度は、脳虚血後高血糖と脳内 SGLT の脳虚血時における詳細な関係性を明らかとした。さらに、脳内 SGLT アイソフォームの中でも、SGLT-1 が脳虚血性神経障害の発現増悪に特に関与している可能性や、脳虚血後の脳内 SGLT-1 の発現誘導機序の一部も解明している。加えて、SGLT を介したナトリウム流入がこれらの増悪機序において重要な役割を果たしていることも明らかとなった。 これらの成果は、国内外の主要学会において随時発表している(学会発表計 7 件、うち国際学会 1 件)。さらに、この 1 年間で 3 報の国際学術誌に筆頭著者として公表し、精力的な研究活動を展開している(研究発表参照)。 以上、研究は順調に進んでおり、おおむね良好であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、脳内 SGLT-1 を介したナトリウムの流入による脳虚血性神経障害発現の増悪機序解明を目的とし、検討を行いたい。具体的には、以下の通りである。 ① 脳虚血ストレス負荷後の脳内 SGLT-1 発現誘導機序の解明 : 末梢において、MAPK が SGLT-1 の発現誘導に関与することが報告されている。さらに、MAPK は脳虚血ストレスによって活性化されることが知られていることから、脳虚血後の SGLT-1 の発現誘導にも MAPK が関与する可能性が考えられた。そこで、MAPK 阻害剤を用いて、これを生化学的に証明する。 ② 脳内 SGLT-1 を介した脳虚血性神経障害の発現増悪因子の網羅的解析 : 脳内 SGLT-1 ノックダウンマウスを用い、脳虚血ストレス負荷後の遺伝子発現変動を、マイクロアレイ解析によって同定する。同定された遺伝子については生化学的な検討によって、脳内 SGLT-1 による神経障害の発現増悪への関与についてを明らかとする。 ③ SGLT-1 を介したナトリウム流入による脳虚血性神経障害発現の増悪機序における電気生理学的検討 : SGLT-1 を介したナトリウム流入が、細胞膜の脱分極や細胞内カルシウム濃度を上昇させることが報告されている。さらに、脳虚血ストレス負荷後には、過剰な脱分極や細胞内カルシウム濃度の上昇が生じ、細胞死が誘導されることが知られている。以上より、脳内 SGLT-1 を介したナトリウム流入が過剰な脱分極の誘導や細胞内カルシウム濃度のさらなる上昇を誘導することで、神経障害を増悪させている可能性を考え、パッチクランプ法を用いて電気生理学的に解明を行う。
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Research Products
(10 results)